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【映画レビュー】彼の見つめる先に
盲目の人とかゲイを扱う話だからダイバーシティ思想強めの話なのかな?とちょっと身構えて見たけど、そういう押しつけがなくて思いのほか良い映画だった。私のように身構えてしまって見ていない人にこそ見て欲しい。
高校生の、高校生らしい友情や恋愛や家族との関係を描いた作品だ。
主人公が盲目だからそういう障害者の話なのかと思ったけど、わりとどんな高校生にも共感できる悩みを描いている。ゲイを扱う映画にありがちな、嬉しい事も起こるけどそれ以上に辛い事が起こりすぎる傾向もなく、高校生にありがちな初めての恋をちょっと切なくて甘酸っぱい範囲で描いてい。そういう全体的にすごく普通っぽい感じが好きだ。
一番最初のシーンが、すごくいいなと思った。私は知ってて見たけど、主人公が盲目である事を知らずに見た鑑賞者が自然にそれに気付けるさりげなさがめちゃくちゃ上手い。彼らがまだキスもした事ない、恋に憧れる高校生である事も理解できる。
盲目の主人公には、いつも助けて世話を焼いてくれる幼馴染っぽい女の子の友だちがいる。彼女をはじめ、学校には主人公の味方もわりといるし、でも主人公をからかってくる嫌なヤツもいる。この適度なバランスも良い。ある日現れた転校生の男の子も味方の一人で、自然と3人で一緒にいる事が増えていく。そんな中で、今まで何でも2人でやっていた事が、ちょっとずつバランスが崩れて、すれ違ったりケンカしたり関係が変化していく。
彼らの年頃らしい嫉妬やわがままさが、甘酸っぱくて良い。こういう映画にありがちな、盛り上がりを作るために登場人物たちが傷つき過ぎる感じがなくて、普通っぽい感じが好きだ。
主人公と家族の関係も、ありがちだけど共感できる。盲目の彼を過剰に心配する親の気持ちも理解できるし、主人公が障害のせいでいつも自分のやりたい事ができないと不満を覚える気持ちもわかる。ただ、主人公の不満がどんどん溜まっていって家族が険悪になっていった中で、これが障害のせいではなく、ごく当たり前の反抗期と、ごく当たり前の親が子どもを心配する気持ちなんだと気付かされるシーンはすごく良かった。
映画の全編を通して、良い意味で普通っぽい、行き過ぎてない感じがすごく好きだ。盲目とか、ゲイとか、そういうセンセーショナルさに頼らず誰にでも共感できる喜怒哀楽や、若い子たちの眩しさを感じる。
そして、そういう普通っぽさでわかりにくいけど映画を作る上手さも結構感じる。上述の冒頭のシーンを始め、地味だけど、上手い。
最後のシーンもその上手さが詰まった、良いエンディングだ。
『彼の見つめる先に』 3.5