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【映画レビュー】ヒプノティスト 催眠

しっかり作り込まれた部分もあるが、ご都合主義の粗も割とある。ただ、個人的にはけっこう好きな映画だと思った。

一家惨殺事件の犯人を追うサスペンスミステリー。ただ、犯人を推理するために整備されたサスペンスではないし、サスペンス以外にも事件を追う人々のドラマを多く含む。だからサスペンス目的で見ると期待はずれに思ってしまうかもしれない。
主人公は国家警察の男だが、ドラマ部分を多く担うのは催眠の技術で事件に協力する医者の男だ。この医者の男の人生再興物語を楽しめるかどうかが、この映画を楽しめるかの分岐点だと思う。

北欧の暗くて雪深い中都市で、英語じゃない聞き慣れない言語で繰り広げられる物語が、ハリウッド映画とは全然雰囲気が違って、たまにはこういう映画を見るのも良いなぁと思わせる。この地味で珍しい雰囲気が、リアルなストーリーによく合っている。催眠を使う映画のどこがリアルなんだと反発されそうだけど、個人的には催眠に不自然さは感じなかった。

むしろ不自然に感じたのは、容疑者の元へ行くのに被害者家族を同伴して争いになるような場面などだ。まあでもこれは、映画らしい場面を作るためのご都合主義だろうし、許容できる範囲だった。一部そういう場面はあったけど、全体的にはむしろリアルだ。夫婦ゲンカや親子の会話とか、家族がいる同僚との距離感とか、そういうドラマパートのリアルさだけでなく、ミステリーパートの読めない感じも何だかリアルで良い。このリアルさを、犯人を推理するために整備されていないと評したが、そういう型をあまり気にしていない感じが好きだ。私はさほどミステリー好きではないので、犯人を追う事を目的にしていないから、こういうリアルさが珍しくて楽しいのかもしれない。

ただ、ミステリーのルールを破った反則みたいな映画ではなく、ちゃんとミステリーとして成立しているとは思う。ちゃんと伏線を引いては回収しているし、この設定がこういう形で活きるのか!みたいな納得を得る場面もある。
凄惨な現場の作り込みとか、人間の心の動きのわかりやすさとか、基本的にものすごく映画を作る技術の高い作り手という印象だった。

主人公の警察官の男が、何か過去にトラウマがあるような人物なのかと思ったら、ただの仕事熱心な独身男性だったのだけは意外だった。まあ、そういうドラマを見すぎた先入観だったのかもしれない。

『ヒプノティスト 催眠』 3.0

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