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【映画レビュー】最後にして最初の人類

個人的にはめちゃくちゃ面白いと思ったけど、人によっては、というか多くの人にとっては退屈で意味不明で変化がなくてこんなの映画じゃないという評価になりそうな作品だ。でも私の好みにはめちゃくちゃ刺さる映画だった。

この作品は、最初から最後まで不思議な建造物(と、たまに緑色の光)をモノクロで映しながら、不思議な音楽を流し、SF的な物語を女性の声で語るだけである。雰囲気としてはちょっと『ラ・ジュテ』に似ているけど、人間が出てこない分こちらの方が無機質な印象だ。
おそらく多くの人にとっては退屈な映画であろうが、一部の人にはめちゃくちゃ刺さると思う。それを見極めるのは簡単で、ほんの少し映画を見てみて映し出される建造物や語られる物語に惹かれなければもうそこから面白くなる事はない。逆に、なんだこの不思議でカッコ良い建物は?!とか、なんだこのちょっと難解だけど哲学的で面白いストーリーは?!とか思ったら、たぶんもうそこからずっと面白い。

映画のストーリーはただナレーションによって語られるだけで、実質的には小説を読んでいるようなものだけど、その語られている小説がめちゃくちゃ面白いという感じだった。SFなのに、その現実離れした登場人物の感情を理解できたり、巻き起こる非現実的な状況が純粋に面白かったり、現代に通じる哲学的な示唆を感じたりできる。本当に、純粋に面白い小説を読んだような感覚で楽しかった。

その面白い小説が独特の間を取りながら語られるので、Audibleみたいなものよりは雰囲気が出る。しかも映し出される建造物がこの世のものとは思えないような独特な雰囲気で、語られるSF物語によく合っている。それをまとめるちょっと不安になるような不思議な音楽も含めて、構成要素が全て自分の趣味に刺さる感じで、珍しくて不思議な映画だけど本当に面白かった。

『最後にして最初の人類』 3.5

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