【映画レビュー】曲がれスプーン
面白いと面白くないの境目って、すごく薄くて曖昧で個人差があるんだろうなと思う。私はこの映画『曲がれスプーン』と笑いのツボが合わなかった。でも、この映画を面白いと感じなかったのがちょっとしたズレなのは、何となくわかる。
このズレはわりと感覚的にすぐに感じられる事が多くて、だいたいこの映画のように、最初のシーンでうーん……とあやしい空気を感じて、5分も見ればはっきりつまらないと感じて、その印象のまま上ブレも下ブレもせずに終わる。たまにこんな人出てるんだ!とキャストに対しての驚きがあるくらいだ。この映画、チョイ役キャストの驚きには富んでいたので、そこは楽しめた。
ただ、出演時間の多い喫茶店に集まる人々が、ことごとく地味な男性ばかりだったのが不思議だ。どうしてストーリーのメインになる人々が男性ばかり、地味なおじさんばかりだったのだろう。イケメンだったり女性だったりしても良かっただろうに。この喫茶店に集まる男性たちの劇団っぽい会話のやり取りが、個人的には特に合わなかった。映画を見ている時からかなり舞台っぽい空気感だなと思っていたが、やはりもともと舞台だったものを映画化したものらしい。舞台のキャストをそのまま映画に持ってきたのかもしれないが、やはり映画には派手さが欲しい。派手さを求めない映画もあるが、こういうコメディ映画にはキャストの派手さはプラスになりそうだと思うけど。
元になった舞台や映画の脚本などを担当している「ヨーロッパ企画」は『探偵☆星鴨』という深夜ドラマの脚本や監修をしていた劇団で、『探偵☆星鴨』はかなり好きなドラマだったので、ヨーロッパ企画が肌に合わないわけではないと思う。実際、両者はかなり似ているのに何が原因で自分の評価が全く違ってしまうのかは不思議だ。
笑いのツボさえ合えば、たくさん伏線を引いては回収するし、前向きになれるようなストーリーだと気に入る人は多いと思う。私は小さな伏線を引いたり拾ったりするより人間の心の動きを楽しみたいタイプなので、あまりその点にも魅力を感じないが。でも、軽トラのおじさんと見つめ合っていた事以外、ちゃんと伏線を回収していたテクニカルさは感じた。あの軽トラの人はなんだったのだろう、私が何か見落としたのだろうが……。
ちなみに、クリスマスなのでクリスマスにまつわる映画を見ようと思ってこの映画を見た。確かにクリスマスにまつわるものが所々出てくるのだけど、必然性がないのもあって、この映画にはあまりクリスマス感はない。
『曲がれスプーン』 1.5