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【映画レビュー】フレンチアルプスで起きたこと

この邦題のさりげなさ、映画の雰囲気や内容にとても合っていて素晴らしい。ものすごく変わっているのに、ある意味ではストレートで映画らしいとも思える、面白い作品だ。

休暇でスキーにやって来たとある家族の、そこで起こったわだかまりを描く物語。
映像はとても静かに、何も足さず、しかしこだわりを持って作られているのがよくわかる。雪景色はエヂカラがはんぱないし、ドラマチックな撮り方ではないけどオシャレな視点からの撮影にあっと思わされる。
そして驚いた事に、BGMがほぼ無い。印象的なクラシックがここぞという時にかかるだけで、あとはもう全てそこで起こっている事の音しかしていない。それがまた効果的で上手くて、例えばスキー場のリフトの音なんかは普通の作品だったら気にもしないんだけど、すごく意識付けられてそれが音響効果になっていたりする。

主人公夫婦のわだかまりのキッカケの起こり方がすごくリアルで上手い。現実って、こんな風にいつの間にかとんでもない事が起こって、そこで身の振り方を失敗すると取り返しがつかなくなったりする。だからものすごく共感できる。
楽しいはずの休暇をそのわだかまりに囚われながら、夫婦はギスギスと過ごす。子どもも夫婦に振り回される。どちらが悪いかといえば、どちらも悪い。なんでそんな事をするんだと糾弾してしまう場面も、すごく共感できると思える場面も、夫婦どちらの言動にも起こる(私はそうだった)。そういういい所もわるい所もたくさんあるキャラクター達も、家族のように親近感を覚える。

こだわりの強い、例えばキャラクターのたった一つの行動が気に入らないと映画の評価を大きく下げてしまうようなタイプの人にはこの映画は向かない(そう、この映画の主人公の奥さんみたいなタイプだ)。でも、作品から距離を取って俯瞰で色んな事を考える事ができれば、こんな面白い映画もあるんだなぁと思えるはずだ。
そして子どもはかわいい。いつだって子どもはかわいい。

『フレンチアルプスで起きたこと』 3.5

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