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【映画レビュー】DUNE デューン 砂の惑星

何も知らずに予想だけで言ってしまうのだけど、この映画にはきっと名作と名高い原作があるのだろう。それを映画の枠に収めないといけない。この映画はPart.1で、何部作なのかわからないけど、3部作だったとしても全体で6~7時間になる。到底そんな範囲には収まらない壮大で魅力的な原作の世界観から映画にできる範囲を選びとらなければいけない。そして第一作目としてこの映画の155分の中に何を詰め込むか、をさらに絞らなければいけない。

そんな苦心が透けて見えるような映画だった。いや、この映画に原作などなくて、単に監督が作り出した大きな世界観を伝えきれていないだけなのかもしれないけど。まあでも、有名原作がないSF大作をこれはPart.1で続きがあるぞと言って作れる時代でもなさそうだけど。
きっと原作ファンからしたらあの名作がこんな素晴らしい映像に!みたいな喜びがあったことだろう。でも事前情報のない初めてこの物語に触れる者からすると、わかりづらい。いろんな事が唐突に起こって、それがどこに繋がっているのかが見えない。いや、見えないとは言い切れないのだけど見えにくい。時間が経っていくうちにこの人はこのグループとこのグループに所属していて難しい立ち位置なんだなとか、この対立構造を描きたかったんだなとか、わかっていく。こういう映画をわかりにくいと言うと、映画を見る資格のないバカ扱いされるからみんな黙ってるんだけど、絶対にもっと分かりやすくした方が面白い映画になる。明確に作った「謎」以外がわかりにくいのは万人受けしづらい。

ちょっと長々と不満を述べてしまったんだけど、主役のポール役のティモシー・シャラメはすごい。もうこの人のためにこの映画を作ったんだと言われても納得できるくらい、説得力に満ちた若き王子だ。彼が一国の王子で、しかも世界をひっくり返すような特別な力を備えていて、若さゆえに危うい事がビジュアルから感じ取れる。この映画が上述した不満以上の駄作であっても、ティモシー・シャラメが主役なら許せるだろうと思えるほどの圧倒的王子感だ。
そして、彼との対比というか、若くて華奢で危ういポールの周りには大人のかっこいい男がたくさんいる。腕利きマッチョの渋い軍人たちもそうだが、個人的には一国を統治するポールの父が大変魅力的だ。二人からは渋いオヤジと若き青年と真逆のビジュアルの中に、血の繋がった親子らしい雰囲気も感じる。父や家臣など渋くてカッコいいオヤジたちが、命を懸けて若き王子を守りたくなるような説得力だけでも、キャスティングの大成功を物語っている。
これは全く意図していないシーンなのだと思うけど、ポールと父と軍人や衛兵たちで歩いているだけのシーン(0:57ごろ)で、みなが頭のブレない真っ直ぐな姿勢で歩いていて、ポールだけが体を左右に揺らすような歩き方をしている。それが訓練された歩き方をしている大人と、まだ未熟な、しかし特別な若者の対比という感じで妙に感心してしまった。

そして、この映画の一番の売りは圧倒的な映像なのだろう。映像は文句なくすごい。SFらしい近未来感あふれるガジェットやCG映像もすごいし、砂漠という圧倒的な大自然の映像もすごい。砂漠の画力ってハンパないなぁと、ドラマ『VIVANT』を見ていた時に思ったのだけど、本場ハリウッドの本気の画作りの砂漠は本当にすごい。この画力ならどんなにストーリーが駄作でもある程度の映画に見せてしまいそうな程に。

個人的には、なにか笑える要素があればもっと魅力的だったと思う。主人公ポールといつも行動を共にする小さなネズミみたいな。しかしそういう万人受けの王道みたいな要素を加えていくから映画が似通っていってしまうのだろうから、笑いの一切ない大作も必要なのだろう。でも、少しでも笑いがあれば退屈さが軽減されると思うんだけどな……。

『DUNE デューン 砂の惑星』 2.5

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