【映画レビュー】オットーという男
王道のヒューマン・コメディって感じで、めちゃくちゃ笑ってめちゃくちゃ泣けるめちゃくちゃ良い映画。個人的に、トム・ハンクス主演映画の中でもかなり上位に好きな作品になった。
トム・ハンクス演じる主人公のオットーの、世を拗ねた堅物オヤジから変化する様を描いた映画。孤独な年配の男の晩年が思わぬ変化を見せるような作品は割と多いが、本作もその一つだ。
主人公のオットーは口うるさい堅物で嫌われ者ではあるけど、面倒くさいオヤジだけど言ってる事は正しいなぁと思わせるキャラクターになっているのが上手い。オットーの家の向かいに越してきた家族も、図々しいけど明るくて楽しい、絶妙に不快感のないキャラクターだ。そういう、個性的でわがままで優しい、見ていて楽しいキャラクターがたくさん出てくるのが良い。特にオットーの家の向かいの奥さんは、見ていてすぐに好きになる。そして、彼女にぐいぐい来られて仕方なく付き合っている様子だったオットーが、実はすごく彼女の事を認めていた事がわかるシーンはめちゃくちゃ泣ける。
オットーが自分の思うように事が運ばずどんどん周りで起こる事に巻き込まれていくうちに、人生がゆっくり好転していくストーリーが映画の王道って感じで楽しい。物語が進むにつれて、オットーのそれまでの人生が描かれ、彼がどうしてこんな堅物になっていったのかが理解できる。そして、堅物だけじゃない、彼のフェアで優しい部分にも触れて、どんどん彼の事が好きになる。キャラクターもストーリーも、あまり尖った部分はないベタでよくある感じなのだけど、やっぱり王道が持つ魅力って大きいなと思う。
ベタでよくある映画ではあるけど、ちゃんと映画を作るのが上手いなぁと感じる所もたくさんある。この行動がここに繋がるのか、という伏線のようなものがたくさんある。向かいに越してきた家族の、子どもたちとの出会い方なんかも上手いなと思う。時間の経過が子どもの成長でわかりやすく表現されている部分とか、そういう基本を押さえているなぁと感心させられる表現もある。
やっぱり、孤独なおじさんの晩年モノって魅力的な作品が多いなと思った。私も『シングルマン』とか『グラン・トリノ』とか『イコライザー』とか、大好きな孤独なおじさんモノ多いし、本作もそのリストに加わる映画となった。
本作はリメイク版らしいので、ぜひ元になった映画の方も見てみたい。
『オットーという男』 4.0