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【映画レビュー】シンデレラマン

たぶん実話を基にした映画なんだろう。事実に縛られた良さと悪さの両方を感じられる映画だなと思った。

ボクシング映画だ。かつて世界チャンピオンに手が届きそうだったほどのボクサーが、ライセンスも失い金もなく、世界恐慌の中で貧困にあえぎながら必死に家族を養い、またボクサーとして駆け上がる物語だ。タイトル通りのシンデレラストーリーだが、ボクシング映画としては『ロッキー』シリーズの方が個人的には好みだなと思った。まぁ、ロッキーは名作すぎる。実話から外れられない本作より、ロッキーがドラマチックなのは仕方ない。

ただ、家族の物語、一人の男の生き様みたいなものは素晴らしい。かつての蓄えを世界恐慌のあおりを食って失い、貧困の中で必死に家族を養おうとする姿は素直に尊敬できる。子どもたちへの接し方も、貧しい中で尊厳を失わず、愛情を感じられるものだ。こんな生活の中で、家族全員が支え合って寄り添って生きているのが本当にすごいと思った。
そんな極貧の日雇い仕事で食いつなぐ生活の中、ボクサーとしてカムバックする機会を得る。どん底を味わった彼の、ボクシングへの向き合い方が真摯でいいなと思った。リングの上の苦しみなら耐えられる、という言葉はカネがなく子どもたちに苦労を掛けながらどうする事もできない苦しみを味わった彼の心からの言葉だ。
そこからのシンデレラストーリーの中でも、彼がずっと家族への愛情が第一で、謙虚で周りへの感謝を失わず、人格者のままでいるのが良い。特にボクシングなど戦いを描いた作品で、主人公がこれだけ怒りとか反骨心とか成り上がり欲がないというのもなかなか珍しいなと思う。

ちょっと長めの作品で、しかも場面選択が拙い感じがするのは残念だ。この場面からいきなりこの場面に飛ぶの?とか、重要な場面を飛ばして盛り上がりに欠ける感じとか、回想なのか現在なのかわからない場面とか。そこさえもっと上手ければ、もっと名作扱いだったんだろうなと思う。

あと、個人的にラッセル・クロウがあまりに昔のボクサーってこんな体型だよなっていう体型に仕上がっているのがめちゃくちゃすごいなと思った。役作りでは済まない(もちろん役作りもしているのだろうが)、元々の体型があの時代のボクサー体型すぎる奇跡を感じた。

『シンデレラマン』 2.5

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