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【映画レビュー】ウエスト・サイド・ストーリー

名作であることは知っていても、なんとなく見ずに過ごしてきた作品のひとつ。スピルバール監督作品という付加価値が乗っかったリメイク版の映画を見てみた。

もともとはブロードウェイミュージカルの人気作品が映画化されたもの。そのミュージカルの方も過去の映画も見ていないが、きっとリメイクに当たってなるべく忠実に過去作品をなぞったであろう事がうかがえる。というのも、2022年の作品とは思えない程に古典的なストーリーラインなのだ。リメイクものじゃなく純粋な新作として2022年にこのストーリーの映画を作ったら酷評されてしまいそうな部分が多々ある。しかし、原典に近いものを現代の技術で作り直し多くの人にまた古典の名作を見てもらう事も意義深いとは思う。
作品のメインテーマである「分断」は、現代の日本に住んでいてもはかなり身近なテーマだ。対立する双方の事情が描かれ、分断はこうして起こるんだなぁと構造がきちんと理解できる。その「始まり方」はきちんと描かれているが「終わらせ方」が描かれている訳ではないので、分断に対する知識を深めることができる作品ではあるが、必ずしも教訓を得られる作品ではない。

作品を見た後で知ったのだけど、もともと『ウエスト・サイド・ストーリー』はシェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』をもとに作られた作品らしい。不勉強なのでロミオとジュリエットも名前は知ってはいるがちゃんと見たことはない作品なのだが、言われてみれば断片的な知識からもロミオとジュリエットを想起させる部分があった。禁断の恋に落ちる男女や、有名なバルコニーのシーンを思わせる構図や、結末のすれ違い部分など。
古典的名作『ロミオとジュリエット』を1960年前後の時代にリメイクして全く新しい『ウエスト・サイド・ストーリー』という名作が生まれたように、『ウエスト・サイド・ストーリー』をリメイクした全く新しいスピルバーグ作品が2020年代に生み出される様を見てみたかったなぁという気もする。

もともと『ウエスト・サイド・ストーリー』が舞台作品だった経緯からか、短い時間軸で狭い範囲の物語であったり、ストーリーラインの古さは感じるが、考えさせられる部分も多い、名作らしい説得力も感じられる作品だった。なにより、歌やダンスのエネルギーや迫力はさすがだった。
トニー役の背の高い男の子が、『ベイビードライバー』の子だった事は後から知って驚いた。大きくなったなぁ……。

『ウエスト・サイド・ストーリー』 2.5

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