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円満のロゴと壁の絵、ご縁の話 (第12話)

【前回の記事】

【ロゴ作成の色々】

今日は円満のロゴを作った時の話から書いていこう。

やっぱり和食屋さんだし、店名のロゴは筆字が良いと前々から思っていた。誰か頼める人いないかな?と考えていて、ふと、あるストリートアーティストさんを思い出した。

・遼二君

当時から更に数年前のこと。原宿を特に用もない感じで歩いていた時、確か明治神宮辺りの通りでご自身の作品を並べ販売しているアーティストさんを見かけた。私は一品ものがとても好きなので足を止め彼の作品を眺めた。その作品は自作の詩を筆字で様々な紙に書いたものだ。(相田みつをさんの作品の様な感じ。)インスピレーションで詩を書きますと小さな立札に書いてあった気がする。へ〜と思いつつその時はすぐに立ち去ったのだが、なんだか後ろ髪を引かれる気がしてその人の元に戻り、詩を書いてもらったということがあった。

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詩を書いてもらえますか?と伺うと、まずはフルネームをメモに書くよう指示された。

「僕の目を見てもらえますか?」

数秒、目を合わせると彼は色紙に言葉を書き出した。その作品が上の写真のもの。書いてもらった後にその場で私はそのアーティストさんと話をした。なぜこの活動をしているのか?将来、なにをしたいのか?など。左下に愛と平和そして自由と書いてあるが、これが当時の彼の信念だった。

この日は色紙の作品を受け取り連絡先を交換する事もなく帰って、もらった色紙は当時働いていた代々木のバーの飾り棚に飾った。そこから半年くらい経って彼がFacebookからメッセージを送ってくれてSNS上で繋がる事ができ、その後は直接会うことはなかったがどんな活動をしているのかはFacebookを通じて知っている、そんな間柄だった。

お店のロゴ制作にあたって彼のことをふと思い出した。

・制作依頼

私が独立をしたのは彼から連絡をもらって2年程経った頃だったから、彼に連絡する時にまだ覚えていてくれるか?少し心配だったが、快諾してくれてロゴの制作依頼することになった。

彼は遼二君と言う。ストリートでインスピレーションを文字にする活動をしていたからだろう、私のお店に対する思いを素敵な文字にしてくれた。

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何度かの打ち合わせの後、円満のロゴはこの様に決まった。円の字は月のイメージ。ロゴの中にいくつも◯が隠れていて柔らかくて凄く良い。私自身とても気に入ったし、後にお客様から何度も可愛いや優しくて良いとお褒め頂き、これにして良かったと感じている。円満という言葉の雰囲気と丸みを持った文字のイメージがよく合っている。

その後も遼二君には手書きのお品書きを作ってもらったりしていて、何かと継続的に仕事の依頼をしていた。印刷会社に頼めば写真の入ったカラフルなお品書きを作ることはできるが、それより彼の温かみのある文字の方が私は好きだ。

あと彼は円満のプレオープンの前日に友人を紹介してくれた。名前は松本君、自然を大切にする絵描きさんだ。

・松本君

遼二君も松本君もだが、目に見えないモノをとても大事にする人達だ。遼二君はインスピレーションで詩を書いていたし、松本君はご縁をとても大事にする方だ。

【繁盛祈願の祝詞】

遼二君や松本君の事を考えると、私はいつも開店当時の色々を思い出す。遼二君が松本君を私に紹介してくれたご縁で、松本君には複数枚の絵を円満の為に描いてもらった。素晴らしい芸術的センスを持つ彼らのお陰で、円満は何倍も素敵なお店になったと感謝している。字も絵も下手な私の店だが、彼らを信頼した事で私の想像をはるか超えて素敵なお店になった。

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この写真の背景にある百合の花の絵は松本君が1番最初に円満の為に描いたものだ。この絵が円満に来たその経緯は大事な思い出の一つ。

・プレオープン初日

私は神社がすごく好きで、神道を宗教というよりはライフスタイルとしてとても大事にしている。伊勢参りには4回行っているし、産土神社への初詣も必ず行く。そして円満の開店の時には絶対に神職さんに祝詞をあげてもらうんだとずっと目標にしていた。

プレオープンは2014年3月4日17時、この日の昼下がりに神田明神(円満の氏神様)の神職さんをお呼びし、円満の開業、繁盛祈願の祝詞を挙げて頂いた。私にとってこの事は念願だったわけだが、松本君はお客様代表ということでここに参列してくれたのだ。

・祝詞

さて祝詞を挙げるとはどういうことをするのかというと、まずは祭壇を作りお酒やお野菜をお供えする。そこに神様をおろし、神職さんが祝詞を挙げた後、私たちが玉串奉納で玉串と共にお願いをお伝えして、最後に神様を天におかえしするというもの。

玉串奉納は二礼二拍手一礼の作法で行うのだが、その時の松本君の二拍手はまさに魔を滅するが如く力強いもので、円満の無事を心から祈ってくれているのが伝わり胸が打たれた。

【お店に飾る絵】

写真の百合の花の絵のことだが、こちらは松本君が後日この神事へ招待した事へのお礼として、お店に合わせて描いてくれたものだ。銀色の絵具で描かれた百合の花の絵、花言葉やお店のライトの位置など、様々に考慮されたこの絵は初めからここにあったのでは?と思う程、飾った瞬間からお店の風景になっていた。

白を基調に作ったお店だったので、実は絵を飾る場所は沢山あったのだが、この百合の花の絵を見るまでその事に私は気がつかなかった。絵の力でお店はとても明るくなった。そこで私はもう一枚、壁絵の制作を松本君に依頼した。

・金の錦鯉の絵

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この金の絵具で描かれた鯉の絵は松本君の2枚目の作品だ。命が沸き立つように泳いでいる。円満の営業中、夜がふけるにつれお店の灯りを暗くして行ったのだが、薄暗い時のこの絵の綺麗さは素晴らしかった。

・茜色の空の絵

お店のトイレが殺風景で好きじゃなかったので、絵を描いてもらった事があった。どんなものが良いかと聞かれたので、トイレに空が欲しいとお願いした。

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茜色の空!そこにシルエットで飛び立つ鳥が一羽。この作品はしばらくトイレに飾っていたがあるお客様が大変気に入って、その方にお譲りした。今はその方のお宅のリビングに飾ってある。素晴らしい作品はこんな事も起こるんだなぁと思った出来事だった。

【ご縁】

遼二君との出会いは本当にたまたまだったし、のちにFacebookで遼二君が私を見つけてくれた事で色々は繋がった。ご縁とは不思議なものだなぁとつくづく感じる。遼二君、松本君、お二人のお陰で円満は素敵なお店になった。この2人に限らずだが、色んな人に助けられてお店を作る事が出来たんだと、冷静に振り返る今だからこそ強く感じる。それら全ては有難いご縁だなと思っている。

ご縁とは偶然なのか、必然なのか…本当に不思議なものだ。

祝詞の話に戻るが、祝詞の冒頭は「掛けまくも畏き大神様の〜」と始まる。口に出して申しあげるのも憚られるほど尊い神様を前にして恐縮でございますが…という意味なのだが、それを独特の言い回しで唱える。神職さんが祝詞を挙げる最中、私たちはちょうど会釈程のお辞儀の姿勢でそれを聞いていた。どんな事を言っているのかな?と思いつつ聞いていると、日付や私の姓名、そしてここの住所を言った後、この日この場所を良しとして下さいと、祝詞によって言挙げして下さっていた。これを聞いた瞬間、私はもう涙が止まらなくなってしまった。

今まで頑張って働いてお金を貯めていた時期がやっと結実したんだと妙に過去を実感したのと、あぁ、いつの日か、この日この場所にお店を作って良かったと話す日が来るんだと未来が見えた瞬間でもあった。

祝詞を挙げて頂く事は夢だったとさっきも書いたが、本当にこの瞬間の閃きというか、〝今”というものを感じた衝撃はその後に沢山辛い事があったが、ずっとお守りになっていた。

そして現在の私は、あの日あの場所に円満を作って良かったと完璧に思えている。


今日はロゴを作成してくれた遼二君とそのお友達の松本君に関しての記事でした。最後まで読んで下さりありがとうございました!


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