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くまモンに学ぶ仕事の流儀(番外編・前編)プロフェッショナルなのは誰か

NHKプロフェッショナルに登場したくまモンを見て刺激され、くまモンのプロフェッショナルぶりにいかに仕事に活かせるエッセンスが詰まっているかを、全14回に渡り書き連ねてきました。ただ、時系列に並べてしまったので、その内容については話題が入り組んでしまってわかりにくかったかもしれません。また、「くまモン」はあくまでもキャラクター。彼をプロフェッショナルたらしめているのは彼を支える実在の人々です。そこで、くまモンを取り巻く人々とそのプロフェッショナルぶりをあらためて羅列的にご紹介します。マネージメントをする立場にある人も、デザイナー、職人、現場で働くサラリーマンも、必ず誰かにチカラをもらえるはずです。

①蒲島郁夫熊本県知事

プロフェッショナルにも登場していましたが、くまモンの誕生にとって、この蒲島県知事の存在は大きいものです。そもそも九州新幹線全線開通を熊本県にとって「危機」と判断したのも、くまモンの採用を英断したのもこの知事だったからこそ。さらに、ここぞという時には自らプロモーションに登場し、あちこちにくまモンを連れ歩いてPRしてきました。というと、なんだかビジネスマン出身の、ノリのいい切れ者知事、という印象を受けるかもしれませんが、実際の蒲島さんはいたって穏やかそうな朴訥な雰囲気の方。どちらかといえば不器用そうな...(失礼)方です。その経歴は↓の本に詳しく書かれているので、ぜひ読んでいきたいのですが、高卒で農協の職員になったあと、キャリアを積んで東大教授にまでなったという異色の経歴の持ち主です。モットーは番組内でも何度か紹介されていたように「皿を割れ」。「人よりも皿を洗うものは人よりたくさん皿を割る。だから皿を割ることを恐れずに行動しろ、新しいことにチャレンジしろ。」という意味です。この時「何かあったら責任は私がとりますから」とサラリと言ってのけるところに、理想の上司像を見た人は多かったのではないでしょうか。私も十数年間サラリーマンをやりましたが、「責任は俺がとる」と言ってくれる上司、「何かあったら守ってくれる」と期待できる上司は、なによりありがたい存在でした。「チャレンジしろ、責任は俺がとる」これを自信をもって言えるようになったら、マネージャーとしてプロフェッショナルなんじゃないでしょうか。

②デザイナー 水野学

すでに何度か紹介していますし、メディアでもたくさん紹介されていますので割愛しますが、くまモンは、なんといってもこの方のプロフェッショナリズムの賜物です。ロゴ制作の依頼を受けたにも関わらず、「本当にそれだけでいいのか?」と考えて、勝手にキャラクターの提案をした、というエピソードは本当にしびれます。しかもその時すでに、くまモンの姿も名前も決まっていた、というのだからなおしびれます。水野さんの仕事についての姿勢は、デザイン業ではない人にも、というかむしろデザイン業じゃない人のほうが参考になるのでは?と思うほどにロジカルで、なるほど!と思えるポイントが詰まっています。

③着ぐるみ制作会社

着ぐるみというと、「かわいいけれど中に入るのは過酷」というイメージがあると思います。ところが、はじめて動くくまモンを見た人は、誰しもその機敏さに驚くと思います。スタッフを振り切って走り出したり、ステージを飛び降りたり、自転車に乗ったりバンジージャンプまで...。こんな軽快な動きを実現した背景には、実は凄腕着ぐるみ制作会社の存在があります。それは宮崎県にあるKIGURUMI.BIZという会社。この会社は、従来「重い」「暑い」といった過酷労働だったゆるキャラを、少しでもラクに動きやすくしようと素材を変えるなどの工夫を重ねたことで、走り回ったりEXILEクラスのダンスまでこなせるゆるキャラを実現させました。今や、ゆるキャラグランプリに登場する数百体のうち半数がこの会社の出身とも言われています。調べてみるとくまモンも、Ⅱ型は違う会社の制作なのですが、Ⅲ型はKIGURUMI.BIZの制作。もしかすると、Ⅱ型からⅢ型に短期間でアップデータしたのは、あとからこの会社の存在を知ったからなのかもしれません。
しかも話はそれだけではありません。KIGURUMI.BIZで制作を担っているのは、元工場長で現在は社長である加納ひろみさんという方なのですが、彼女は、前社長(現会長)と結婚したことで会社に入り、そこから着ぐるみ制作をはじめました。ただ、前社長とは再婚で、以前の旦那様と結婚している時から「家庭と仕事」に悩んでいたそう。結果的に離婚後も、今度はシングルマザーとして経済的な苦労があったようです。その経験から、女性を支えることに強い意志があり、現在KIGURUMI.BIZのスタッフは会長以外全員女性。しかもシングルマザーの方を積極的に採用しています。女性の視点や手先の器用さは着ぐるみ制作には強みとなっているようで、順調に業績を伸ばしているだけでなく、社長個人や会社の経営スタイルがメディアに取り上げられることも少なくありません。くまモンの自由奔放な行動は、工夫を重ねた着ぐるみ制作の技術と、そこに注がれる女性達の愛が支えているのですね。

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