くまモンに学ぶ仕事の流儀(8)足元のブランディング
第2章 拡散まで
その5 足元のブランディング〜くまモン◯くまもん×
twitterをバリバリ活用しているくまモンですが、高いクオリティを維持し続けている裏には、くまモンという存在をしっかりと確固たるものにしよう、言い換えれば、くまモンという商品をブランド化しよう、という意気込みを感じます。
それを象徴する行動をひとつご紹介。
くまモンはtwitterで頻繁に更新をするので、毎日のように一般のファンから応援コメントが届きます。その中には、くまモンを「くまもん」や「クマモン」と表記するものもあります。うっかり間違えているのか、あえてなのかはわかりませんが、
一般的にはその程度ならスルーするところ。しかし、くまモンは必ず訂正します。
「応援ありがとうだモン!それと「モン」はカタカナかモン☆」など言い回しはソフトですが、送り主もまさかキャラクターに訂正を受けるとは想像していないと思うので、なかなかインパクトがある行動です。
イラストの使用についても厳密なレギュレーションがあり、定められたイラスト以外は使ってはいけない、色を変えてはいけない、くまモンは男の子という設定なので女の子を想起させるリボンなどはつけないなど自由なアレンジを禁止しています。
このように表記や表現にこだわるのは、高級ブランドがロゴの取り扱いに厳しかったり略称を嫌うのと同じように、ブランドを守る際の基本的な姿勢です。
せっかくのファンからのメッセージに訂正をすれば、ムッとされることもあるかもしれませんし、レギュレーションのせいで大手とコラボするチャンスを諦めたこともあったかもしれません。
そんなリスクを冒しても、くまモンを守ってきたことで、イメージが統一され、いまや「ブランド」と呼べるレベルまでになったのです。
▶︎本日のポイント
いつの間にか「ブランディング」という言葉が一般的になり、ビジネスにおいても「ブランディングを目指す」なんてことが当たり前に言われるようになりました。
ただ、ブランディングとは何か、しっかりと理解されていないケースも多いように思います。
ブランディングとは本来、『提供する価値を明確にし、それを多くの人に浸透させる活動』つまり、扱っている商品を単なる商品から「ブランド化」することを言います。
「ブランド」というと「高級なもの」というイメージがつきまといますが、それは、ブランディングには手間と費用がかかるため、高級品でないとなかなか着手できない、という背景があるためでしょう。例えば高級ブランドのバッグは、半永久的に修理をしてくれたり、店構えから店員さんの振る舞い、ラッピングやショップバッグまでぬかりがありません。それを守るには、相応の人数を抱え、教育やデザインに時間をかけます。1個数千円のバッグにそこまでやっていたら割に合いません。
もしくは、高級品でなくても、多店舗化(チェーン化)や大量生産することで
認知度と利益率を高め、ブランド化しているケースもあります。例えば、ハンバーガーといえばマクドナルドで、安い牛丼といえば吉野家です。
ただ、くまモンは、高級品ではないどころか、使用料が無料なのでいくら名前が浸透しても直接的にお金を稼いでくることはありません。ですが、「名前の表記」「基本的なビジュアル」をしっかり守るという、きわめて足元レベルの作業を重ねることによって、お金をかけずにブランド化を実現させているのです。
これは、小さなビジネスを手がけている会社などにはとても参考になる事例なのではないでしょうか。