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くまモンに学ぶ仕事の流儀(3)魂は細部に宿る

第1章 誕生まで
その3 デザインのチカラ 魂は細部に宿る

ロゴのオマケで生まれたくまモン。
だからといって、けして雑に生み出されたわけではありません。
それどころか、キャラクターとしてのあらゆる要素において緻密にできています。

まず、デザイナーの水野学氏は、くまモンを制作した際、顔のどこかに赤い丸があるキャラクターが成功する(●ンパンマンしかり、●カチュウしかり)という方程式を意識した、とインタビューで語っています。
そして、おおよそのデザインを決定したところで、プロトタイプを実に3000パターン作成し、最終的にひとつに絞ったとか。
それは、目の位置が0.1mm上とか、口が0.1mm大きいとか、素人目には見分けがつかないレベル。
ただ、その微妙な違いが、かわいいかかわいくないかを、人は直感的に見分ける。だから実際に試してみて最もかわいいバランスを探したそうです。
こうして磨き上げられたくまモンは、熊本県に提案されました。

ちなみに、他にもくまモンがキャラクターとして優秀な点をあげると
①黒、白、赤の3色だけで構成されている
くまモングッズは申請をすれば利用料ナシでイラストを使用できるという仕組みですが、色数が少ないということは版代など開発費用も安く抑えられます。
例えば白地のTシャツにくまモンをプリントするには2版ですみます。
グッズ開発を地元中小企業の活性化に生かそうとするなら重要な要素です。
②着ぐるみになった時に動きやすい
くまモンがここまでの人気になった要因には、着ぐるみになった時のキレのある動きがありますが、その動きを生み出しているのは適度な手足の長さ(短さ?)や、ペンを持ってサインをしたり、スカートをめくったりできる手の構造です。おかげで、子供達と抱き合ったり目線を合わせたり、ダンスを披露することも可能です。(なかには、ダンスどころか自立して歩くことすらままならなかったり、体が大きすぎて建物内に入れずPRの機会を失っているキャラクターも珍しくありません。)
③真っ黒な体が目立つ
キャラクターの多くは、黄色やピンクが多く採用されています。多くの人にソフトな印象を与えようという理由だと思いますが、イベントなどでたくさんのキャラクターが集合した場合、埋もれます。真っ黒なボディは一見キャラクターに不向きなようですが、淡い色のなかで黒一色はとても目立ちます。

これらの全てがあらかじめ計算されたことなのかはわかりませんが、
少なくとも3次元化した時のことは考えていた、とインタビューで語られています。

▶︎本日のポイント
「魂は細部に宿る」と言われるように、大枠の方向性を正しく設定しても、最後の詰めを怠ることで失敗する事例はたくさんあります。味は美味しくても盛り付けに失敗した料理のように、本質が良くても食べてもらえなければ意味がない。
優秀なデザイナーやコピーライターは、〆切よりかなり前にひととおりの仕事を終え、いったん寝かせてから見直したり、多くの時間を仕上げや細部に費やすそうです。
クリエイターでなくとも、営業マンがつくるプレゼン資料や見積書とて同じこと。細部にばかり囚われるのは本末転倒ですが、最後にもうひとふんばり、レベルアップにトライするくらいの余力は持ちたいものです。

そんな水野学さんがどのように余裕を生み出しているかを紹介した著書

そして、デザイナーの仕事は生まれ持ったセンスではなく、知識の積み重ねの元にある、と書いた著書。デザイナー以外の仕事にもとても役に立ちます。



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