くまモンに学ぶ仕事の流儀(2)期待値を超えて本質を突く
第1章 誕生まで
その2 水野学の仕事術〜くまモンは実はオマケだった
前回、熊本県が九州新幹線全線開通に危機を感じたことがすべての始まり...とは書いたのですが、これだけではまだくまモンは誕生しません。
熊本をPRしなければと考えた熊本県は、熊本出身の放送作家小山薫堂氏に相談。
小山薫堂のアドバイスによって、熊本の知られざるいいものやいい場所を発見し紹介していくキャンペーン「くまもとサプライズ」が企画されます。
そのロゴデザインを依頼されたのがクリエイティブディレクターの水野学氏。
彼は、まずは依頼されたロゴデザインを仕上げるのですが、ここで水野学の水野学らしさが発揮されます。
彼は、依頼された仕事に応えるだけで本当にクライアントの目的を叶えることができるのか?ある意味「勝手に」「おせっかいにも」オマケの提案をすることがよくあるらしいのです。(詳しくは著書をご参照ください。)
熊本県の依頼についても、本当にこれだけで「熊本をPRする」という目的は達成できるのか?もっとわかりやすく、誰か司会者のような人が前にたって説明してくれたらもっと伝わるんじゃないか?と考えました。
その時、イメージしていたのは当時活躍中のあの宮崎県知事だったそうですが、熊本県にはそんな有名な知事もいない。それに実在する人物では、活動に限界がある。それならキャラクターはどうか?と考え出されたのが、そう、くまモンなのです。こうしてくまモンは、ロゴのオマケとして提案され採用され今に至ります。
地域活性化の話題でよく聞かれるような、「ゆるキャラでもつくれば盛り上がるんじゃないか?」といったノリとは全く違い、本質的な解決、デザイン思考の結果として生まれたからこそ、その後もくまモンの活動は、本質的な問いかけの上に躍進していくことができたのです。
▶︎本日のポイント
あらゆる仕事、あらゆる業界において、相手の依頼を受けてそれに応える、というのは一般的なシーンです。デザインをする、商品の選定をする、プランをつくる、サービスを提供する...など。その時、相手がAと言ったからAを提供すればいい、と済ませてしまっていないでしょうか。
依頼されたことさえやっていれば、少なくとも怒られることはありません。
ですが、相手はAの裏にBという希望や悩みを抱えているかもしれません。
もしかすると、相手自身もBに気づかぬままAと言っているのかもしれません。
ここに思いを馳せて、一歩踏み込み、手間を惜しまず提案をする。
この違いが、予期せぬヒットを生むかもしれません。
「プロフェッショナル」のなかでも、くまモンが常に期待値を越えようとする姿勢が何度も紹介されていましたが、そもそも誕生の時点で、常に期待値を越えようとする水野学氏の姿勢が反映されているのかもしれません。
水野学の代表的な著作はこちら。