スペインのジェンダー絵本『たかくとびたて女の子』
2019年、スペインを訪れたとき、ジェンダー絵本のコーナーを設けてある書店さんをいくつも目にしました。女性たちが変わろうとしている勢いを実感。
そんな中で出会ったのが『たかくとびたて女の子』でした。個人の心の中にメッセージを送って、気づく大切さを重視しているところが、いいなと思ったのです。自信をなくして、できない理由をあげて、人のせいにしてしまう。それはかつての、いいえ、今の自分かもしれない。
夢を掲げて前に進もうとしても、いずれ壁にぶち当たる時がくるでしょう。けれど私が私でいれば、行きたいところへ行ける。そんな力強いメッセージが託されているように思いました。
作者のラケル・ディアスは、フェミニズムだけでなく、いじめをテーマにした本も多く出しています。また、歌手として、そして作詞家としても活躍しています。彼女の自由な精神が強いメッセージ性を持ち、言葉の力を発揮した作品になっているように思います。
最終的には民主主義をテーマにしているのかな。誰もが平等に、夢を抱き追う権利があるのだと。
あらすじ
アナは、世界一のパイロットになるのが夢です。マリーはバイオリン弾き、ヒメナは作家になりたいと思っています。彼女たちには、つばさがついています。つばさは目にはみえません。けれど、かなえたい夢がある人には、いつのまにか、つばさがついているのです。
ところが、夢がかなわないように、あれこれじゃまをする 悪の軍団がいました。リーダーは、ソレハムリです。彼らは、女の子たちのポケット、くつ、カバンに、小石をつめこむんで、空を飛べなくしてしまうのです。
はじめにあらわれたのは、ガイケンビジン。
手にまきじゃくをもって、女の子たちにつぶやいています。
「もっと すらりと ほっそりと。もっと すらりと ほっそりと…」
つぎにあらわれたには、カガミニウツス。
よいことではなく、わるいことばかりうつすのです。
そして、フカンゼンは「たりない」を連発し、カタハメは、大袋につめこんだ ≪あるべき≫を小石にかえて、女の子たちのカバン、くつ、ポケットにつめこんでいきます。
こうして、いつのまにか、女の子たちはできないことばかり数えるようになってしまいます。空なんて飛べっこないって、あきらめていくんです…。
けれど、ある日気づくときがくるでしょう。だから、どうか夢をあきらめないで。とるにたらないちっぽけなことに、どうかふりまわされないで。それは、ただの石ころにすぎない。
あなたは、あなたらしく、かろやかに。だれでもみんな、つばさをひろげれば、空たかくとんでいける!