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予算編成が始まる前に

財政課ってどうして現場のことわかってくれないの
私たちが財政課のことをわからないといけないの
お互い学習せずに水掛け論の繰り返しなんて馬鹿みたい
わかりあおうとしないで議論するなんて時間の無駄よ
#ジブリで学ぶ自治体財政

暑かった夏が終わり,秋の訪れを感じる季節。
そろそろ次年度予算編成が始まります。
先行きの見えない厳しい財政状況の中,今年も全国の自治体で財政課と現場の「要るものは要る」「ない袖は振れない」という決して交わることのない平行線の議論が繰り広げられるのかと思うとうんざりしますね。
毎年同じ水掛け論を繰り返さないで済むために押さえておきたいポイント。
今日は,予算編成に入るうえでの心構え的な過去記事を備忘録としてまとめてみたいと思います。

当然ながら現場の皆さんの最大の関心事は,どうすれば予算が付くのか。

財政課は、少なくとも予算編成の過程では、施策事業の優先順位付けを行うことはありません(笑)

施策事業の優先順位を決めているのは企画部門です。
もし、自分の所属でやりたいことの優先順位に不満があるのであれば、企画部門に怒鳴り込んでいってください(笑)
じゃあ、財政課は何をしてるんだというツッコミについてはこちら。

個別の事業査定で財政課がどこを見ているのか,何を判断基準にしているのか,手の内を明かすとこんな感じです。

逆に,毎年予算が削られることに理不尽を感じている人も多いでしょう。

平たく言えば、税収が増えないのに社会保障費が増えて自由に使える財源が毎年目減りしているので、既存の事業に充てている経費を圧縮して、新規事業の財源にしている、という構造なのですが、詳しくは拙著「自治体の”台所“事情 ”財政が厳しい“ってどういうこと?」をご参照ください。
では,既存事業のマイナスシーリングにどう抗えばいいのでしょうか。

まずはなぜマイナスシーリングなのか,全体の財政状況や見通しを財政課に聞きましょう。
税収がなぜ増えないのか,社会保障費はなぜ増えるのか,その結果,自分たちが予算で裁量的に使える経費がどのくらい減るのか,その根拠も示さずに昨年より〇%カットでお願いします,というのは財政課の横着だと思います。
そもそもシーリングや査定で削ったお金は誰がどこで使っているのでしょう。

厳しい財政状況の中,他の事業の経費を削減してでも推進すべき重要かつ緊急性の高い事業に充てる経費を捻出するために,つまり,財政課から見れば,政策推進を担う部局が実施すべき,継続すべきと言っているその予算要求に対して何らかの財源を手当てするために,既存の施策事業全体を見渡してそのあり方や内容や見直して財源を生む作業を査定という形で行っているのですが,この戦いの真の勝者は誰なのでしょうか。

悲しいことに,現場が予算を要求してもそれが全部計上されることはないので,どうすればより多くの額を確保できるかと苦心した果てに,自課の予算要求を認めてもらうために説明を「盛る」ということがよく起こります。

騙すことやそれを暴くことに時間や労力を費やすのではなく,互いのおかれた立場を理解しようと努力し,その置かれた立場でそれぞれが誠実に精いっぱい持ち場での責任を果たすことができるという相手への敬意と信頼を以て接することが何よりも大切なのですが。
過剰な予算要求だけでなく,予算要求を受け取る財政課の立場からすると,これだけは勘弁してほしいというものがあります。

こんなディスコミュニケーションの悲劇を避けるには,予算編成のときだけでなく,普段からの情報交換が大事です。

一方,予算要求する側が財政課を騙そうとするだけでなく,逆も当然あります。
財政課側の犯している罪,それは「沈黙」です。

現下の財政状況を背景に非常に厳しい査定で既存事業を抜本的に切り込んだとしても,なぜそうなるのかという点で現場の納得感がなければ,必ず混乱をきたします。
これまでのように「最後は俺たちが頑張るしかない」という財政課職員の自負だけで乗り越えられる危機ではないと私は思っています。
これから必ず忙しくなる予算編成過程での議論ですが,その前提として財政課の皆さんに心してほしいのはこれです。

財政課が守ってほしいルールを決めたのであれば,そのルールに込めた思い,なぜそのような決まりを設けているのかということまで知ってもらい,守ってもらうために,財政課が普段,事業担当課とどのようなコミュニケーションをとるべきか,ということを考えてほしいと思います。

財政課の皆さんに向けては,ほかにもいろいろと厳しいことも言ってきましたが,もう一つだけ挙げるとしたら,これになると思います。

考えたって、議論したって、足りないお金が沸いてくるわけではありません。
内部の対立に時間を割き、エネルギーを消耗するのではなく、財政課と現場が同じ方向を向き、限られた財源と限られた人的資源をどれだけ優先順位の高いものに投入していくか、そのことをどれだけ市民にきちんと説明し、理解を得てこの難局を乗り切っていくか、が今こそ求められているのです。
これから始まる長い冬。
予算編成の中で繰り広げられる対話と議論が庁内全体のコミュニケーションとして機能し,その中で意思決定に向かう部分最適のベクトルを束ね,組織の力を全体最適に向かう力として最大化することを,財政課,現場それぞれの立場で意識してほしいと思います。

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
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