以心伝心
財政課から行革担当課への異動だなんて最悪だよ。
財政課には予算を付ける権限があるけど、行革は削るだけだから。
もう役所の中の友達、一人もいなくなるだろうな。
#ジブリで学ぶ自治体財政
拙著「自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと」でも書きましたが、全国の自治体で財政課は他の職員から嫌われています。
しかし、もっと嫌われるのが今日取り上げる「行革担当」です。
行革すなわち行財政改革とは、無駄な事業に切り込むコストカット、あるいは事務の効率化やサービス向上を図る行政改革など、自治体がこれまで行ってきた仕事の無駄を省き、内容ややり方を是正し、市民が望む姿に改善改革を図るもので、総論としては市民から支持される期待感の高い仕事ですが、一方でこれまでの仕事のやり方に固執するそれぞれの現場をはじめとする抵抗勢力との闘いを強いられるハードな職場です。
行革は財政部門や政策推進を担当する企画部門が担当する場合、あるいは専任組織を置く場合など、どの部署に置かれるかは自治体によってさまざまですが、確実に言えるのは「庁内に敵を作る」宿命を帯びているということです。
これまで全国の自治体で様々な行革の取り組みが進められてきましたが、その多くは見直すべきテーマや事業について行革担当から庁内各職場に示し、個別具体に見直しを検討させてその内容を行革担当が吟味し、庁内での議論を経て見直し実施の可否やその程度を政策判断するというプロセスが一般的で、これを毎年度の予算査定で行うか、数年間の実施期間を設け計画的に実施していくためのいわゆる「行革実行計画」的なものを策定するかのどちらかです。
近年では見直しを具体的に検討する枠組みとして、有識者や市民からなる第三者機関を設置して無駄な事業や改革すべき事務を客観的に議論、指摘してもらうという手法も多く採られています。
この方法は、行革担当が具体的な事業を抽出して見直しを庁内に投げかけても内部の抵抗で頓挫し改革が骨抜きになってしまうことを避けるために改革の方向性を外部から示してもらうという側面があり、また改革の方向性についてあらかじめ市民理解を求め、市民からの支持を改革を断行するエネルギーにするという効果を期待しています。
しかし、このような方法で改革のお墨付きが得られたとしても、見直しを指示された現場ではどうやっても「やらされ感」「押し付けられた感」は否めません。
現場の抱く行革への抵抗感が高じれば成案に至るまでの内部調整に時間と労力を要するだけでなく、その過程で感情的な分断が起こった場合には将来にわたってしこりを残すこともあります。
また、この抵抗感は課題解決に向けた検討過程で現場の本気度を減退させ、そのことが原因で改革が中途半端な妥協に終わることもあり、課題に即した適切な見直しに至る保証はありません。
このため、行革できちんとした結果を出すためには、現場が行革に対して正しく理解し、それを「自分事」として捉え、その当事者意識の中から必要な改善改革をボトムアップ、現場発信で進めて行くことができるようにならなければならないのです。
しかし、この行革に対する現場の抵抗感、どうすれば払拭できるのでしょうか。
確かに自分がやっている仕事の内容をある日突然「無駄な事業だから廃止」とか「やり方がまずいのでもっと効率化を」とか言われたらムッとしますよね。
人は誰しも自分が今やっていることにそれなりに価値があると考えたいもので、見直すことそのものが自己否定であるように受け止めるのももっともです。
また、実際に見直すことで今までと仕事のやり方が変わることは事実で、その変化そのもの、今までと違うことを嫌う人やうまくいくのかといぶかる人もたくさんいます。
あるいは見直さなければいけないことはわかっていてもその見直しを関係者、特にサービスを受けている住民に説明し理解を得ていくことに抵抗感を示す人もかなりいますし、その見直しによって自分たちの組織や職業そのものの存在意義が問われるため、組織防衛、生活防衛のために改革に反対するというハードな戦いも行革のテーマによっては起こります。
いずれにせよ、財政がひっ迫しているとか市民サービス向上のためだとか、懇切丁寧に行革の必要性を説かれたところで、その指摘が行革担当からであろうと第三者機関からであろうと、たとえ首長からであったとしても指摘を受けた側からすれば「なんで俺のところなんだよ」という抵抗感はぬぐえないのです。
この問題を解決する方法が一つだけあります。
それは自分から進んで改革を志向する職員、職場をあらかじめ作っておき、行革担当が旗など振らなくても組織の使命として自ら率先して日々の業務を刷新していく仕組みを講じておくことです(笑)
そんな無茶な!と言う声が聞こえてきそうですが、実のところそれしか解決策はありませんし、それは実現可能です。
これまでの記事でご紹介してきた「枠配分予算」は、予算編成の一手法としてご紹介してきましたが、その底流にあるのは「自律経営」という組織運営哲学です。
それぞれの局、部、課、係、職員に与えられた権限と経営資源で常に最大の効果を発揮するよう努める組織。
組織全体がどこに向かっていて、その中で自分が何を担っていて、どう務めるべきか、ふるまうべきかを自分で理解し、指示がなくても自ら判断し実行できる組織。
トップダウンでもボトムアップでもない、常に明確な指示命令がなくても逆に指示を仰がなくても各現場の判断でトップが行うであろう判断を行いうる組織。
それが自律経営のできる組織です。
自律経営の根幹は「もし自分が市長だったら」と思える職員を育てること。
実際に「わからないから市長に聞いてみよう」となんでも市長に伺いを立てることができるはずがありません。
トップが号令をかけなくても、行革担当が指示しなくても自分で行革を進めることができる組織であるためには、普段から、自治体全体がどういう方向に進んでいるのか、何を優先順位の高いものと位置付けているのか、という全体の方向性を職員一人一人が知っておくとともに、行革が何のために行われるか、行革で生み出された経営資源がどのように活用されるのかという構造(ビルド&スクラップ)についても、職員個人レベルで正しく理解しておく必要があります。
これまでご紹介してきた「枠配分予算」は予算編成を効率的に行うことができる仕組みであるとともに、それができるようになることを通じて、それぞれの局、部、課、係、職員個人が自治体全体を俯瞰しながら自らが与えられた領分で自律経営ができる組織へと成長させることができる仕組みでもあるのです。
そういえば今、福岡市で「行革」って旗振ってやってるんですかね。
たぶん「行革」なんて、それぞれの組織で、日々の業務の中でやるのが当たり前ってことになっているんじゃないのかなあ。
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