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市役所生活を振り返って
市役所を辞めるのにやり残したこと
あったら辞めるわけないだろう
自分を今まで育ててくれた恩を
組織の中では返せないことくらいかな
#ジブリで学ぶ自治体財政
退職を表明してから3週間。
年末休暇までの1週間で私の公務員人生が終わります。
なんだかあっけないですね。
SNSでもたくさんの反響をいただきましたし、毎日のようにDMやメールで市役所の内外から激励のお言葉をいただいています。
市役所の中では、過去の部下同僚、一緒に仕事をした先輩後輩、33年前に同じ門をくぐった同期、オフサイトミーティング仲間など、本当にいろんなところからお言葉をいただき、10年前、20年前に一緒に仕事をした仲間との絆が今も残っていることに感銘を受け、ご縁の深さや広がりに涙しています。
私の退職について、人材の損失だというご意見もあるようですが、そんなことはありません。
私の仕事は常に「属人的」だと言われ、異動した後に承継が難しいと言われ続けてきました。
しかし、そもそも前任者が情熱や異能で顕著な成果を上げたからと言ってそれをそのまま続ける必要もないと私は考えています。
全ての人が自分の能力とその時点で周囲にいる人たちの協力を結集してベストを尽くす、自分らしさを活かした「属人的」な仕事をすればいいし、それが市民の幸せにつながれば手段は問われないと思います。
前任者ができたことを後任者ができなくてもそれを責める必要はなく、新たにその席に座った人間が自分の力で頑張るだけなのです。
課題は日々変化するしその対応も日々変化します。
その変化に対応できるように我々組織も変化し、メンバーも入れ替えて新風を吹かせているのですから、先人がその情熱と異能で築いた素晴らしい成果をただ守り通すことだけがすべてではないと割り切り、今の自分たちだからできる仕事を、自信をもってしっかりやればいいのだと思います。
職員向け財政出前講座はもう少し組織的にやっておけばよかったという思いはありますけどね。
私の退職の報に触れ、私が適切に「評価」されていないことを不服として辞めるのではないかといぶかる方もおられるかもしれませんが、それは全くありません。
以前私は、人事評価についてこんなことを書きました。
私たちはなぜ「評価」されたいのでしょうか。
組織の求める人材として自分を高めたいから?
異動や昇任などの配置管理を有利に進めたいから?
私はこの手の組織側の論理に基づく「能力」評価にはあまり魅力を感じません。
仕事はやはり「実績」評価。
自分に与えられた仕事を求められるレベルでやり遂げることは職業人として当然のことですし、それができていなければ叱咤激励を受け、期待以上の水準であれば大きな声で誉めてほしい。
その際に求めるのは、別にお金や表彰、あるいは異動や昇任で有利な配慮をしてもらうことではありません。
私が欲しいのはただ一つ。
私が成果を出したことを認め、ほめてほしい。それだけです。
ほめてもらうのは上司である場合が多いですが、私の場合は違います。
一緒に働いた仲間から「一緒に働けて良かった」と言われること。
目の前の市民から「あなたに担当してもらってよかった」と言われること。
仕事で触れ合う多くの人からどれだけ「ありがとう」と感謝の気持ちを示してもらえるかどうかだけがすべてだと思っています。
というわけで私は、仕事で接する市民から、職場の多くの仲間から、仕事で関係を持ちご協力いただく方々から「ありがとう」と言ってもらえることを日々の目標とし、逆にすべての方々に「ありがとう」と言うようにしています。(引用終わり)
退職に際してたくさんのメールやメッセージで私の仕事を「評価」していただき、改めて今、この記事で書いたことを噛み締めています。
先日、市職員として最後となるオフサイトミーティングで尋ねられました。
「市役所人生で一番思い出深い職場はどこですか」
その場では、最も厳しく時間外勤務もたくさんしたものの、成果として手ごたえを遺せた二つの職場(これについては別稿に譲ります)を挙げましたが、本当は全ての職場に思い出があり、思い入れがあります。
平成3年に福岡市役所に入庁し33年間で16か所の職場を巡りました。
企画課、財政課といった官房部門から区役所の現場まで、また都市計画、交通、水道といったハード部門から環境、経済、スポーツ、教育などのソフト部門まで多岐にわたる事業部門を渡り歩き、市役所で知らない事業領域はないと豪語できるだけの経歴をいただきました。
法律の専門職として奉職しましたが、環境政策やまちづくりの分野で技術屋さんと混ざりあって仕事をする中で、自分が技術屋であるかのようにその分野にはまり、その一方で職場の中で数少ない法律屋として重宝され、スキルを磨くことができました。
職員だけを相手にする財政課が嫌で対外的な交渉や連携ができる仕事にあこがれていたら経済分野で毎日役所の外の人と会う仕事に就き、そこで得た人脈が異動後も生きることとなり、それが昨年の水道企業団50周年記念事業の大成功につながりました。
結局のところ、組織の人事は他律的なもの。
自分の花を咲かせる場所やその咲かせ方は自分で考え、行動し、その果実を自分でつかみ取るしかないってことなんだと思います。
事務仕事が苦手で公務員に全く向いていないはずの私に、自分の個性を生かして仕事をすることを許し、33年の歳月を経て今の私を育ててくれたおおらかな組織に改めて感謝いたします。
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
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