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「短歌人」2024年1月号掲載作品

ボンボン

てのひらにのるボンボンの缶ひとつまこと小さきものは愛おし

ボンボンをしづめし紅茶ほんのりと香りをたてて三時をまはる

懐かしい未来の匂ひ古びたる雑誌の隅の星占ひは

ときとして記憶の底になるあれは祖父母の家のぼんぼん時計

北に居て北を恋ふこと ゆつくりと舌の上にてボンボン溶ける

ハッカの香嗅ぎつつ憶ふ若き日の旅といふ旅、海といふ海

横浜と神戸の記憶が混ざるのは港の風と洋館のせゐ

※同人2欄 冨樫由美子

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