世界には美しい場所がたくさんある。不老ふ死温泉に行った。
最近の僕はふらふらと旅にばかり出ている。同じ場所にいるとすぐに飽きてしまう。だから気が付くと旅の計画をしている。そういう時期なんだろう。それならそれでいい。その時やりたいことをやるのが一番いい。自分の欲望にはなるべく蓋をしない方がいい。抱いた欲望をちゃんと叶えてやること。それが自分を適切に成長させていく。
不老ふ死温泉に行った。ずっと行きたいと思っていた温泉だった。日本海を目の前に望み、海辺にはひょうたん型の露天風呂があり、夕日が沈んでいくところを温泉に入りながら眺めることができる。
そんな夕日に輝く海辺の露天風呂の画像をネットで見つけて以来、いつか行きたいと思っていた。
その温泉についに行ってきた。不老ふ死温泉は自分が住んでいる十和田と同じ青森県内にあるが、アクセスが悪く、車と電車で4時間半ほどかかる場所にある。気軽に行ける場所ではないけれど、心の赴くままに行ってきた。
ずっと憧れていた場所に行くと、案外たいした場所ではなかった、ということもある。想像が大きくなりすぎて、現実がそれを下回ってしまうパターンだ。
不老ふ死温泉はそんなことはなかった。
こりゃ凄いなぁと素直に思った。夕日は眩しすぎて直視できなかったけれど、海が青くて綺麗だった。太陽の光を受けてキラキラと光っていた。あちこちに岩があって、大自然を目の前に茶色く濁った温泉に浸かっていると、自分がその自然と一体となってキラキラ輝いているような気がした。それは、完全に想像を超えていた。
最近の僕はそんなことが多い。行きたいなと思っていた場所に行って、期待を裏切られることなく、素直に感動してしまう。これは想像以上だと思ってしまう。
でもそれは当然なのだ。自分が経験していないものを想像することなんてできない。はじめて行く場所に行けばそこには今まで見たことのない世界が広がっている。だから感動する。
見たことのないものをもっとたくさん見たいなあと思った。感動して生きたいもの。たくさん旅をしたい。
でも、旅はあくまでも旅なので、帰ってくると日常に戻ってしまう。そこには色あせたいつも通りの世界が広がっている。
いや、果たしてそうだろうか、と日常を過ごしながらでも僕はふと思った。不老ふ死温泉のあの素晴らしい日本海の景色の中で過ごした僕は、それまでの僕とは完全に何かが変わってしまったような気がする。その変わってしまった僕の今の眼差しで見ると、日常の世界もまた少し違って見える。
日常の世界の見落としていた美しさに気づくようになる。美しいものを見ると、美しさへの感度があがる気がする。美しいものを見たいから、美しいものを探そうとする、見ようとする。
世界にはまだ僕が見ていない美しいものがたくさんあるはず。それをもっと見たい。
遠くにある美しいものも、近くにある美しいものも、もっとたくさん見たい。それが僕の目に映る世界を、もっと美しいものに変えてくれるはず。
これは不老ふ死温泉近くの十二湖にある青池。とても美しい青だった。不老ふ死温泉に行く際は是非。