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定着しない言葉に、なにか法則はあるのか
どうしても定着しない言葉がある。
それを思ったのは、昨日、一緒にシフトに入っていた仲間の名前が覚えられないからだ。
わりと最近入ったばかりの人ではあるが、何度もご一緒してるし、協力して業務をこなし、たくさんお喋りもしている。
決して印象の薄い方ではない。
珍しいお名前でもない。
月に一度シフトが合うか合わないかという方の名前は普通に覚えているから、単純に人の名前が覚えられないわけでもない。
そういえば、学生の頃学んでいた中国語の「シャツ」が、どうしても定着しない。
これである。
衬衫
Chènshān
「シャツ」=「チェンシャン」
漢字もそうだし、発音もすぐ忘れる。
いつもだ。
定着しない。
特に難しい漢字でもないし、発音もシンプルなのに。
未だにいちいち調べないと出てこない。
中国語はその意味からあてられた漢字と、音をあてた漢字がある。
「シャツ」=「チェンシャン」は意味の方からだろう。
ちなみに、意味と音と、両方が絶妙にうまく合わさった素晴らしい中国語をあげるとすれば、それは「コカコーラ」だ。
漢字だと「可口可乐」。
日本語で書くと「可口可楽」だ。
口に楽しい→美味しい、ということか。
発音はKěkǒukělè。
カタカナで書くのは難しいが、なんとか書いてみると、
「クアーコゥ クアーラー」だ。
なんとなく「コカコーラ」と聞こえると思う。
意味と音。
実に上手くできた言葉である。
「おざなり」と「なおざり」
これもどっちがどうなんだか一向に定着しない。
なのでもうなるべく使わないようにしている。
「やぶさかでない」
とんねるずしか浮かばない。
文中に使ってみたい言葉ではある。
定着しないのとは少し違うかも知れないが、使いこなせない言葉がある。
「ライフハック」だ。
これ、ライフハックじゃね?
このライフハックは素晴らしい!
どれも間違ってる気がするがどうだろう? わからない。
「ヤバい」なんかはうまく使い分け出来ていると思う。
今や多種多様な場面で使える「ヤバい」。
お年頃の子を持つ身として常にこの言葉に触れてきたから、違和感なく使えるし、実際よく使っている。
いい年なのに。
でもできるなら、できるならば本来の意味で使いたくはある。
もともとは丁寧な言葉が好きだ。
「マック」は「マクドナルド」と言っていたし、「ミスド」もちゃんと「ミスタードーナツ」と呼んでいた。
「ファミリーマート」も然り。
が、いつの間にか略することに慣れてしまった。
時を戻そう。
ある言葉が定着しない問題だが、これは何か法則性があるのだろうか。
全くわからない。
「ゲシュタルト崩壊」のような名前があるのだろうか。
そう、「カクテルパーティー効果」とか
「アイスクリーム頭痛」とか「カラーバス効果」などのような名前だ。
あ!そういえば、どうしても入って来なかった言葉がもうひとつあった。
「メソッド」である。
若い時、日本語学校のスタッフとして働いていたのだか、ある時、せっかくだから日本語教師の勉強をしてみよう!と教材を読み始めた。
ところが、そこに頻繁に出てくる「メソッド」がわからな過ぎて、どうしても先に進めない。
「メソッド」は無視して勉強を進めればよかったのだが、なんせ出てくるから。
頻繁に。
結局勉強は初っ端から頓挫した。
うん10年後、その教材を開いた時、「メソッド」はなんの違和感もなくスッと入って来た。理解できた。
この間に何があったというのだろう。
残念なことに、もう日本語教師の勉強への熱意はとうに失せていて、変わっていたかも知れない未来が訪れることはなかった。
今、もう一度「シャツ」=「チェ……」
あれ?
ちょっと上にスクロールしてきます。
……
ん、ぅんんっ!(咳払い)
「チェンシャン」と職場の仲間の名前との共通性はなんだろう。
なぜ定着しないんだ。
昨日ずっとそれを考えていて眠れなかった。
今日、シフトが入ってなくてよかった。
寝不足でどうしようもない。
今も彼女の名前を思い出そうとしているが、やはり思い出せない。
明日確か一緒だから、シフトアプリにログインして名前を確認しよう。
呼びかけられなかったら失礼だ。
すぐにそうすればよかったのだ。
「ナカツカさん」だった。