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とても短いお話

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超短編小説。気が向いたら書きます。
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2019年1月の記事一覧

30年後の独り言

30年後の独り言

魔法の誕生2049年。1月。

ARの発達により『物質が実在する』という考え方は、以前と大きく異なるものになっている。

発達した現在のARは、生まれながら脳に埋め込まれており、視覚だけではなく、ありとあらゆる感覚のすべてを人間に与えている。
見るも、聞くも、触れるも、それらすべてがARにより拡張されているわけだ。
そして、ARが人体の感覚器官の一部として認識されるようになり、『現実などではなく、

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長い間、睡眠という深い沼に落ちる直前、瞼の裏に必ず、一つの扉が映っていました。
濃い藍色の扉は、細かな飾り付けが沢山施され、まるで美術品のような美しさでした。次第に私は、「触れたい」「開きたい」「向こうを見たい」と思うようになりました。その気持ちは日に日に強くなり、毎日の生活よりも、その扉の事ばかりを考えるようになっていきました。

しかし、扉が現れるのは、いつも、眠る直前。
そのまま意識を失って

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地球のカケラ

川辺で、拾った二つの石をぶつけて、どちらが硬いかを勝負させて、それをトーナメント形式の大会にして遊ぶ。

同行者達は少し離れた所で肉やらを焼いたり食べたり、ぶりゃぶりゃと話したりしている。そのとても楽しそうな様子は、ちっとも楽しくなさそうだった。

硬い石大会は思いのほか盛り上がる。堅そうに見えたので独断でシード権を与えた薄い青色の石が簡単に砕けたかと思えば、準決勝では両者二つに割れ急遽サドンデス

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