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「生きるための哲学」から学ぶ"負け組"の底力
昔っから「なんかええ本ないかなー?」と、目的なく本屋をうろつくのが好きだ。雑貨屋でめっけもんを見つけ出すような、あのワクワク感がたまらない。
おすすめ本のコーナーにあった1冊。「生きるための哲学」のタイトルに一瞬、躊躇する。「小難しい感じかな?」
とりあえず本を手に取り、パラパラとページをめくる。「親と折り合いが悪い人に」「自己否定や罪悪感に悩む人に」「自分らしく生きられない人に」といった言葉が目に入る。どうやら、生きづらさに悩んでいる人たちへ向けた本らしい。
エピソードを見てみると、ショーペンハウエル、ヘルマン・ヘッセ、ルソーなどなど…
歴史上、偉人とされる人物の名前がズラリ。
「え?この人たち、生きづらさを抱えてたん?」偉人と生きづらさのギャップに、好奇心をくすぐられた私は即、購入を決めた。
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この本に書かれているのは、いわゆる学者が唱える精神論ではない。精神科医として生きづらさを抱えた人たちに関わってきた、岡田尊司さんが綴る現場の体験。
目の前の命が危機に瀕しているのに、沈黙しているわけにはいかない。「死ぬな」「生きろ」と肩をつかんで揺さぶる方が、何も言えない高尚な哲学などより、よほど助けになるかもしれない。その切なる信念と行動は、人間の本性に基づくものであり、そこにこそ、本来の哲学があると言えるだろう。
偉人を含めた生身の人間のエピソードと、彼らがどのようにして悩みを昇華していったかという個々の哲学が書かれている。
特に印象的だったのは、「あんたは要らん」と親に捨てられた女の子。援助交際にドラッグ…少年院に送られた彼女の気づきは、達観といえるのではないか。絶望の中で見出した彼女なりの哲学が胸に刺さる。
ずっとつらい思いばかりして育ってきたと思って、親を恨んでいたけど。今だって親を恨んでいないと言ったらウソになる。『あんたは要らん』といった母の言葉は、一生心から消えんと思う。
でも、私、こう考えたんです。そうは言っても、私、今、生きてるやんって。今こうして生きてるいうことは、誰かがミルクをくれて、誰かがおしめを替えてくれて、誰かが面倒見てくれたってことやろって。
「私、今、生きてるやん」
この言葉、母からも聞いたことがある。
兄が10歳、私が6歳だったある朝、いつものように出かけた私たちは、夕方、違う家へと帰らされた。そのときは全く意味が分からなかったけれど、ギャンブル好きな父の借金を苦にした夜逃げならぬ「昼逃げ」だった。
ヤクザから「奥さん、もう首くくりなはれ」と言われる状況の中、母は「なんで私がこんな目に遭うんや」と絶望したらしい。絶望し抜いた結果、「今、生きていることに感謝しよう」と思った…と。
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「哲学」と聞くと、自分にはちょっと関係ないかも…と思うかもしれない。しかしこの本は例外だ。読み進めるうち、自然と自分自身の人生に目が向いていく。
"古今東西、人間は何かしらの「生きづらさ」を抱えて生きてきた。生きづらさは決してマイナスなものではなく、創作のエネルギーとなる"
偉人たちの壮絶な人生からは、そんなメッセージが伝わってきた。「なんかうまくいかへん」「自分らしく生きるにはどうすればいいの」と、モヤモヤを抱えている人におすすめな1冊。