「茜色に焼かれる」をアマプラで観た感想は…愛にイナズマとの共通点がある
「愛にイナズマ」を映画館で2回見た。良かったのでアマプラで同じ監督、石井裕也の作品を探して見てみた。
若くして交通事故で死んだ父
開幕数分で死ぬだけの役。オダギリジョー。こんなちょい役にオダギリジョー。ナイス。
つかみどころのない女、田中良子
感情を表さないシングルマザーの女。一体何を考えているのかそれとも考えていないのかが分からない。言動に一貫性がない。謎が多い。
息子と一人暮らしだ。一体どこに向かっているのか。
田中良子のさまざまな顔
子に対する母としての顔
学校で教師に対する時の顔
夫を事故で死なせた加害者家族に対する顔
風俗嬢としての顔
昼の仕事先での顔
昔馴染みの仲間といる時の顔
同級生の男と再会し女を見せる時の顔
人はさまざまな顔を使い分ける。田中良子も多くの顔を持っている。あからさまなほどに顔の使い分けが描写される。
同じ監督の「愛にイナズマ」でも「人はみんな俳優だ。演じているんだ」というセリフがあるがまさにその通りだ。全ての場面で一貫した人間などいない。
抑圧
最初は謎の行動をする人物だった田中良子だが、多くの抑圧を抱えてなおかつ隠し、そうなっていることが分かってくる。居酒屋でお酒を飲みながらわなわなと人間が壊れそうなぐらい震えているシーンでその抑圧の強さが分かる。
作品をまたぐテーマ
この監督のテーマは多くの作品で共通しているのではないだろうかと観始めた時に思ったがやはりそうだった。
愛にイナズマに出てきたような赤い自転車も出てくる。このように作品を超えて共通部分を出してくるのは観客を簡単に感心させるための低コスパな仕組みだとも思えるし、監督にとって大事なテーマが繰り返し出てきているのだとも考えられる。
僕は作品同士がリンクしていることに大げさに感動するわけではないが、そんなに嫌いでもない。
トップのトップまで
田中良子の子供が格好良かった。キャラクターとしての格好良さではなく、父親の息を受け継ぎ「トップのトップまで行く」と心に決めてからは、学業で目覚ましい成績をおさめるのだ。
この映画に勝手にMVPを送るなら子供役の彼にしたい。
自宅の床でアレをするシーンなんか子供役なのによく撮ったなと思った。
熊木くん
名前合ってるかな。なんかそんな名前の男。
40歳近くの田中良子と再会した同級生。出会った時から何だか悪い予感がする。なぜなら顔つきが良くないから。いかにも本命という役どころではないから。
田中良子は彼に人生を預ける覚悟をするが案の定、この男はクズで実は結婚しているにも関わらず刺激を楽しみたいだけの「シンママ食いの男」なのだ。憎まれ役としては上出来だ。
幸子の子供の養育費
養育費って何?誰の?と思わせながら後半は意味が分かってくる。そういうことか。
けいちゃん
子供の頃から父親にレイプされている風俗嬢の女の子。この子は田中良子と仲良くなる。
最後には死ぬ。そしてそのお葬式でいかにも人の良さそうな父親が出てくる。本当に無害そうな。「この親にしてこの子を犯すのか」ということがセリフなしで伝わってくる。
風俗店の店長
永瀬正敏という顔はよく知っている俳優。この人の顔を久しぶりに見た気がする。
最初は嫌な役だが後半にかけてどんどん格好良くなっていく。人が変わったみたいに。憎い。
コロナ
愛にイナズマにもコロナが出てきたがこの映画にも出てくる。きっと作者にとって避けられないテーマなのだろう。
評価
「愛にイナズマ」はnoteのブログで絶賛されているのを何個か見たがこちらはどうなんだろう。愛にイナズマよりもテーマはヘビーでけっこう暗い。
「愛にイナズマ」を見た時は片隅に咲く目立たないが綺麗な花を見つけたような気持ちだった。「人は分からないが俺は好きだよ」っていう。
だけど通好みの絶賛されている映画を自分も絶賛するのはなんだか恥ずかしい気もする。
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