人生の大半を○○として過ごすなんて耐えられない　～星の王子様を読み終わったあとの人たちへ～⑳

砂漠と山と雪の国の動画チャンネルの中を渡り歩きつづけて、とうとうお姫さまは一本の道を見つけた。道というものは、すべての人間のところへつながっている。
「こんにちは」お姫さまはあいさつした。
隣の家にはユリの花咲く庭園があった。
「こんにちは」ユリたちが言った。
お姫さまは、ユリたちを見つめた。
どれもこれも、みんな自分の家の庭の花によく似ている。
「きみたちは誰？」あ然として、お姫さまはたずねた。
「ユリよ、わたしたち」
「ええ！？」お姫さはは言った・・・・・・・
そして、暗い気持ちで胸をしめつけられた。我が家の庭の花は、自分のような花はこの世に一輪しかないと話していたのだ。ところがいま目の前に、そっくりの花が五百もあるではないか。たったひとつの庭園のなかに！
〈きげんが悪くなるだろうな〉お姫さはま思った。〈あの花がこれをみたら・・・・・・笑われないように、ものすごく咳をして、死にそうなふりをするだろうな。わたしは、それを看病するふりをしなくちゃならない。だってそうしなかったら、わたしに当てつけようとして、ほんとうに死んじゃうだろうから・・・・・〉
それから、こう思った。
〈わたしはこの山里に一輪だけの、宝物のような花を持っているつもりでいたけど、ほんとうは、ただのありふれたユリだった。あとは見上げるような高さの山が四方にたくさん、でもそれも、たぶん全部永遠に死んだ山のままなんだ。そんなものだけじゃ、わたしは立派なお姫さまになれないの・・・・・〉そうして猫のお姫さまは、草の上に突っぷして、鳴いて泣いた。