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人生の大半を〇〇として過ごすなんて耐えられない 〜星の王子さまを読み終わった後の人たちへ〜19

お姫さまは低い山に登った。自力で登ったのではない。私が車で連れて行った。赤いリードをつけられ、お姫さまはしばらく周囲を警戒していたが、慎重に歩き出すと一番見晴らしの良い場所に陣取った。きれいに間伐された林の中で切り株を腰掛け代わりに町並みを見下ろした。

低い山だったが、〈こんなに高い山からなら〉とお姫さまは思った。〈この町の様子も人間たちも、きっと一目で見渡せるだろうな…〉ところが見えたのは、林立する杉林の峰ばかりだったのだ。

「こんにちは」念のために、お姫さまはあいさつしてみた。
「こんにちは…こんにちは…こんにちは…」こだまが答えた。
「誰なの?」お姫様は言った。
「誰なの…誰なの…誰なの…」こだまが答えた。
「友達になってくれませんか、わたし、遊び相手がほしいの」とお姫さま。
「わたし、友達がほしいの…わたし、友達がほしいの…わたし、友達がほしいの…」とこだま。
〈なんて変な山なんだろう〉お姫さまは思った。《どこもかしこもガサガサしていて、とんがっていて、風でいっぱい。それに人間ていうのも、想像力に欠けているわ。言われたことを繰り返すだけじゃないか…。わたしの庭には、花がいた。あの花は、いつもわたしより先にしゃべりだした…〉

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マガジンが増えて収拾がつかず、普段の日記と区別するために有料にすることにしました。 素人短編を書いていこうと思います。内容の保証はできませ…

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