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大葉(青紫蘇)を増やそう、猛暑だから。第三十一回「晴れの日は下手の横好き」
なんの酔狂だろうか。雑草ほど生えている青紫蘇の挿し芽にハマっている。
いや、だって、他の植物を育てるのが難しいほどの猛暑だから。最高気温はそれほどではなくても、雨が降らなくて、風呂場が毎日からからに干からびるほど日差しが強い。
そんな中では家の中で挿し芽で植物を育てたい。植える時にはその範囲の草むしりはするので多少庭の手入れにはなる。
だいぶ昔に読んだ「キャットストリート」「花より男子」の漫画のどちらかに、ものが手に届く範囲の部屋で暮らしたいというセリフがあった気がする。多分、キャットストリート?
どっちも同じ作者のドラマになった漫画だ。子どもの頃、私ではなく母がこの漫画にハマっていて全巻家にあったので繰り返し読んだ。我が家の全巻買いのはじまりだった。
どっちの漫画のセリフかも覚えていないので主人公がどの男性にこの言葉を言ったかも覚えてない。ただ言われた男性の雰囲気が好きだった。鬱屈した物憂げな王子様を描くのがうまい作者だった。
当時は質素な生活がいいのかなと思ったくらいだったけれど、自分の手に負える範囲で物事を完結させたいという主人公の心情が投影されていたのだと思う。
手に負えないことに振り回されている人生ではないが、私も何事も大事にしたくないと考えるようになった。主人公とは真逆の後ろ向きな理由でハリキリたくない。
挿し芽はコップより牛乳パックが簡単だ。コップだと半分くらい銀紙で包まないと発根前に根元が腐りやすくなり、発根にも時間がかかりぬめりが出てコップが汚れる。
牛乳パックの方は大抵三日で発根する。汚れても捨てやすい。
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大葉の葉を流し台で千切り、料理に使いながら、葉っぱが無くなる頃には発根しているのがいい。
庭に青紫蘇はたくさん生えていても、案外草にまみれていて、虫が食った葉は使いづらい。なるべく早めに摘んで、新しい葉が出てくるようにした方がいいのだ。
大葉は猛暑に強くてやたらと庭に生えては困る人もいるだろう。一方で植え替えに弱いから、植え直すと枯れやすい。その点、挿し芽であれば香りがよい元気なものをどんどん増やせる。台所の勝手口から出てすぐの小石だらけの荒れ地でも丈夫に育ってくれて便利だ。
これを人間に置き換えると、育ってきた才能を摘んで別の場所で新たにやり直しさせることになるだろうか。管理が行き届きやすいだろうが、いちからやり直しさせられる本人の苦労はいかばかりか。ましてや炎天下の過酷な環境である。丈夫で他人に有用に育った自分に満足できるだろうか。
大葉の気持ちは大葉にしかわからない。
花より男子の主人公は、自分を雑草に喩えていた。どんな仕打ちにも耐えられるという意味だったと思うので、ぜひ大葉にも雑草魂を発揮してもらいたい。
アメリカの大統領選で共和党の副大統領候補の発言が物議を醸している。どうやら欧米では「猫を飼う女」は日本語の「石女」に近い蔑視表現のようだ。なかなか痛烈だ。
さながら野良猫の避妊手術をして猫飼い人生を歩み始めた私はキャットストリートを歩みはじめたと思うべきか。別に不幸ではないが、世間の日差しがつらい人生だ。
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