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コーチのためのスポーツ心理学⑩様々なリーダーシップスタイルを知る

はじめに

スポーツで成功を収めるコーチには、単なる技術指導以上のものが求められ、そのためにコーチに求められるスキルの1つが前回からまとめているリーダーシップです。

前回のnoteでは、チームに求められている、コーチ自身に合ったリーダーシップを発揮することが重要だとまとめました。

しかし、これはコーチングにも通ずる話ですが、1つのリーダーシップスタイルですべての状況に対応することは困難であり、状況に応じて様々なリーダーシップスタイルをコーチ自身に合った形で柔軟に、応用して行くことが求められます。

今回のnoteでは、コーチが習得すべき6つのリーダーシップスタイルと、それらを状況に応じて使い分ける方法についてまとめていければと思います。

リーダーシップスタイル理論の進化

これまでのリーダーシップ理論の変遷を少しだけ紹介できればと思います。
(リーダーシップに関する認識というのはこの変遷の途中で止まっている印象が強いので)

当初のリーダーシップ研究においては

独裁的リーダーシップ・スタイル
(監督が全権を掌握し、すべての決定を下す)
民主的リーダーシップ・スタイル
(意思決定を共有し、意見を述べる機会を与える)
自由放任的リーダーシップ・スタイル
(統制の少ない受動的リーダーシップ)

の3つのリーダーシップスタイルがあるとされており、少し前までは、民主的スタイルが最も効果的とされていました。
(超個人的な主観ではこの認識が強いイメージ)

しかし、先述しているとおり、現在ではビジネス分野などの研究から、スポーツコーチにも適用可能な6つの効果的なリーダーシップスタイルが明らかになり、それらを状況に応じて使い分ける柔軟性が重要だと考えられています。

特に個人的には民主的なスタイルと放任的なスタイルが混在している印象があります。

確かに選手主体で選手の意見を待つことも大切ですが、待ちすぎるあまり選手目線では、放任スタイルになってしまっていることもあるのではないでしょうか。(個人的な感想です)

6つの効果的なリーダーシップスタイル

指揮的スタイル:明確な指示と指導を行う
民主的スタイル:選手の意見を取り入れ、合意形成を図る
先見性のあるスタイル:明確なビジョンを示し、方向性を提示する
コーチングスタイル:個々の選手の成長を支援する
アフィリエイティブスタイル:良好な人間関係を築き、チームの調和を重視する
ペースセッティングスタイル:高い基準を設定し、自ら模範を示す

これらのスタイルを状況に応じて適切に使い分けることが、効果的なコーチングの鍵となります。

ケーススタディ:木村コーチの例

これまでまとめている「コーチのためのスポーツ心理学」では、以下のテキストを参照しています。

タイトルからも分かる通り、海外で販売され、使用されているテキストですが、6つのリーダーシップのスタイルの例として、日本人コーチの木村さんという方のコーチングの事例が紹介されています。

NCAAディビジョン1の大学ソフトボールチームの新任ヘッドコーチ、木村コーチの事例を通じて、各リーダーシップスタイルの実践例。

・先見性のあるスタイル
 就任時のチームミーティングで、プログラムの方向性と目標を明確に説明
・アフィリエイティブスタイル
 自身のバックグラウンドや価値観を共有し、選手との信頼関係を構築
・コーチングスタイル
 個人面談を通じて、選手一人ひとりの目標設定をサポート
・民主的スタイル
 スタッフとともにコンディショニングプログラムを改訂
・指揮的スタイル
 新しいコンディショニングプログラムの実施を主導
・ペースセッティングスタイル
 チームの目標設定セッションを実施

木村コーチは、シーズンを通じてこれらのスタイルを柔軟に使い分けることで、チームの成長と成功を導きました。

詳細は、是非、本書をご参照ください。

複数のリーダーシップスタイルを使いこなすコツ

効果的なコーチングには、状況に応じて適切なリーダーシップスタイルを選択し、流動的に切り替える能力が求められます。

これはこういう時にはこれといったような機械的なプロセスではなく、選手のニーズや感情を敏感に察知し、最適なアプローチを瞬時に判断する能力のことです。

とはいえ、コーチも1人の人間なので、得意不得意があって当然だと思います。

しかし、状況によっては自分の不得意なリーダーシップのスタイルを選択し、発揮しなければいけない状況というのも必ず訪れると思います

自分に不得意なスタイルがある場合、以下の方法で対処できるとされいます。

・補完的なスキルを持つスタッフを採用する
・自身のリーダーシップスキルを向上させる努力をする

後者の方が長期的には効果的ですが、個人的には前者が重要だと考えています。

それだけ優れているコーチであってもすべてのスタイルを完璧に習熟することは不可能に近いと考えているからです。

もちろん、それぞれのスタイルのスキルは、練習を重ねることで上達は可能であり、コーチとしては習熟して行くことを目指すべきだとは思います。

しかし、前者のように様々なスタッフでスキルを共有し合いながらチームを成長させていけるのであればその方が良い。
というかそれこそがスポーツなのでは?と個人的には考えています。

とはいえ、前者を言葉で言うのは簡単なものの、異なるスキルを持つスタッフを採用し、それをコーチ自身が受け入れるというのも長くチーム活動をして行く中では、言葉ほど簡単なものではないと個人的には感じています。

各スタイルの使用における注意点

それぞれのリーダーシップスタイルには、適切な使用方法と注意点があります。

命令的スタイルは時に必要ですが、より効果的に実行するには感情的な自制が求められます。このスタイルの過度の使用は、権力の乱用につながる可能性があり、コーチングにおける典型的な誤りとなります。

ペース・セッティング・スタイルはコーチング・リーダーシップの重要な要素ですが、パフォーマンス目標への過度の執着は選手への配慮を欠く結果となり、チームの士気低下を招く恐れがあります。このスタイルは、ビジョナリースタイルの情熱やアフィリエイティブスタイルのチームビルディング要素と組み合わせることで、より効果的に機能します。

アフィリエイティブ・スタイルはチーム風土の向上に有効ですが、パフォーマンス向上の推進力としては限定的です。そのため、ビジョナリー、ペース・セッティング、コマンドリングなど、よりパフォーマンス重視の他のスタイルと併用することが推奨されます。

民主的スタイルは意見の収集や合意形成に有用ですが、過度の依存は避けるべきです。このスタイルは、インプットを得て納得感を醸成するために用いるべきであり、リーダーが厳しい意思決定を回避する手段として多用すべきではありません。

というニュアンスで本文ではまとめられていますが、このような注意事項もあくまで傾向的なものであり、柔軟に適切なリーダーシップを選択しくためには、自身でトライし、失敗も成功も経験して行く中で、スキルが身に付いていくものだと思います。

そのために原則として今回のnoteでまとめているような知識を押さえておくことが求められると思います。

繰り返しにはなりますが、効果的なコーチングを実現するには、これらのリーダーシップスタイルを状況に応じて適切に選択し、組み合わせることが重要です。

各スタイルの長所と短所を理解し、チームや個々の選手のニーズに合わせて柔軟に適用することで、より高いパフォーマンスと健全なチーム環境の両立が可能となります。

コーチは常に自身のアプローチを振り返り、改善の機会を見出すことが大切であり、この継続的な学習と適応の姿勢こそが、優れたコーチングにつながります。

そしてこのようにコーチがリーダーとして成長するためのステップを踏んでいる学習の姿勢というものは必ず選手にも伝わり、選手のロールモデルとなり、選手のリーダーシップの成長に繋がるのではないでしょうか。

まとめ

効果的なコーチングには、複数のリーダーシップスタイルを状況に応じて使い分ける能力が不可欠です。

木村コーチの例のように、チームや個々の選手のニーズに合わせて適切なスタイルを選択し、柔軟に切り替えることで、最大の効果を得ることができます。

また、自身のリーダーシップスキルを継続的に向上させる努力も重要であり、時には間違ったアプローチを取ってしまうこともあるでしょうが、そういった経験から学び、改善していくことで、より優れたコーチへと成長できます。

複数のリーダーシップスタイルを使いこなすことは、一朝一夕には習得できませんが、意識的に実践し、経験を積み重ねることで、どのような状況にも対応できる柔軟なリーダーシップを身につけることができます。

そして、そのような学習の姿勢というのは選手のロールモデルとして機能し、選手のリーダーシップの成長にも繋がると個人的には感じています。

コーチング哲学を確立し、それに基づいて各リーダーシップスタイルを適切に使い分けることが、長期的な成功への道となります。

選手との信頼関係を築きながら、高いパフォーマンスを追求する。そして、そのバランスを取ることを常に目指し続けるということが、コーチとしての成長には求められるのではないでしょうか。

↓参考文献はこちら↓

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