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コーチのためのスポーツ心理学⑪変革型リーダーシップとサーバントリーダーシップ

スポーツコーチングにおいて、リーダーシップはチームの成功を左右する重要な要素です。

前回のnoteでは、コーチが発揮できる6つのリーダーシップスタイルを紹介しました。

今回のnoteでは、コーチが理解すべきリーダーシップスタイルの違いについて、特に「変革型リーダーシップ」と「サーバントリーダーシップ」に焦点を当てて解説します。

この二つのリーダーシップスタイルは、研究等でも注目されることが多いリーダーシップのスタイルであるため、様々な書籍なども発売されていたりします。

これまでのnoteでもまとめているようにどのようにリーダーシップがいいということはないですが、この2つのスタイルも参考にしながら自身のリーダーシップスタイルに活かしていくことも重要になると思います。

変革型リーダーシップ

変革型リーダーシップとは、リーダーがフォロワーの意識や行動を変革し、組織全体にプラスの変化をもたらすスタイルです。

BassとRiggio(2006)は、変革型リーダーシップを以下の4つの要素で定義しています。

理想化された影響力(Idealized Influence)
コーチの日常的な行動がプログラムの中核となる価値観を模範とし、アスリートに信頼と尊敬を与える。
インスピレーションを与える動機づけ(Inspirational Motivation)
コーチがチームの目標やビジョンに活力を与え、アスリートのモチベーションを高める。
知的刺激(Intellectual Stimulation)
コーチが創造性を刺激し、現状に挑戦する姿勢を促す。
個人への配慮(Individual Consideration)
コーチが個々のアスリートを認め、サポートすることで、アスリートの成長を促進する。

このような変革型リーダーシップを用いることで、アスリートのパフォーマンス向上やモチベーション向上、ウェルビーイングの向上、さらにはチームの結束力向上が実現することが、これまでのいくつかの研究(Becker, 2012; Bormann & Rowold, 2016)で明らかにされています。

変革型リーダーシップを実践するためには、コーチはアスリートの生のエネルギーを洗練された集中力に変える「変圧器」のような役割を果たすとされています。

たとえば、NFLピッツバーグ・スティーラーズの元ヘッドコーチ、チャック・ノールは、一度もタイトルを獲得したことのないチームを引き継ぎ、変革型リーダーシップを用いて4度のスーパーボウル優勝を果たし、彼のリーダーシップスタイルが、組織全体の文化に変化をもたらし、アスリートに新しい基準と目標を与えましたとされています。

日本でも

このリーダーシップスタイルは、2016年に大躍進を果たしたラグビー日本代表でも取り入れられているリーダーシップスタイルであったとされています。

2016年ラグビー日本代表のメンタルコーチを務められた荒木香織さんはその様子を著書として出版されています。

この著書では、変革型リーダーシップの概要を紹介し、具体的にチーム活動においてどのようにリーダーシップを発揮できる環境を整備し、選手のリーダーシップを鍛え、成果につながっていったのか。

ということがまとめれらています。

非常にわかりやすく、読みやすい書物なので是非一度、手に取ってみてください。

サーバントリーダーシップ

サーバントリーダーシップは、リーダーが他者に奉仕することを第一の目的とするスタイルです。

Greenleaf(1977)は、サーバントリーダーシップを「リーダーは人々に仕えるために存在する」と定義しています。

サーバントリーダーは、自分自身よりも他者の利益やニーズを優先し、フォロワーの個人的な成長を重要視します。

サーバントリーダーシップは、フォロワーの内発的動機づけを高め、メンタルスキルやパフォーマンスの向上をもたらすことが示されています(Rieke et al., 2008; Hammermeister et al., 2008)。

元大学および米国オリンピック女子バスケットボールコーチのケイ・ヨウは、他者に奉仕し、他者の偉大さを育むコミットメントで広く知られていました。彼女のリーダーシップスタイルは、アスリートに対する真の関心とサポートを示し、チームの成功に貢献しました。

また、アメリカ海兵隊でもサーバントリーダーシップが重要なリーダーシップアプローチとして受け入れられており、シネック(2014)の『Leaders Eat Last』では、海兵隊員が最も下級の者から順に食事を受ける文化が紹介され、リーダーが最後に食べることで忠誠心と勤勉さを報いる倫理観が強調されています。

スポーツ現場において、コーチ自身が人間ではなく、AIなのであればこのようなリーダーシップスタイルは、うまく機能するのではないかと個人的には感じていますが、コーチ自身も人間であり、スポーツに関わる1人として、選手に尽くすだけではなく、時には対立し、共に成長していけるような姿勢を持つことの方が重要ではないかとも思うので、このスタイルのみを採用するというのは難しいとは思います。

しかし、先述しているように色々なリーダーシップスタイルを学ぶという観点においてサーバントリーダーシップのようなある種、極端なスタイルから学ぶことも多いのではないかと思います。

リーダーシップスタイルのまとめ

リーダーシップスタイルには様々なものがありますが、効果的なコーチは複数のスタイルを使いこなすことが求められます。

変革型リーダーシップは、アスリートを鼓舞し、高次のパフォーマンスを引き出す力を持っており、サーバントリーダーシップは、他者への奉仕を通じてフォロワーの成長を促進し、組織全体の成功につなげます。

これまでのnoteでもまとめているように、コーチとしての本物のリーダーシップスタイルは、あなたの真の強み、核となる価値観、そしてユニークな対人能力に基づく、総合的な個人的スタイルであり、チームや所属する選手に応じて、「らしく」柔軟に活用していくことが求められます。

次回のnoteでは、リーダーシップの有効性を高めるために使える具体的な戦略についてまとめていければと思います。

ちらっと先出ししておくと、コーチには多くの責任と必要なスキルがありますが、次回のnoteではコーチングの成功に不可欠な3つの心理社会的リーダーシップスキルとされている、ビジョン・人間関係・意思決定に焦点を当ててまとめれいければと思います。

リーダーシップスタイルについて深く理解し、自分自身のスタイルを確立することで、アスリートやチームにとって最高の結果を引き出すことができます。

コーチ自身のリーダーシップの成長は必ず選手のリーダーシップの成長に繋がり、それらはチームとしての成長にも繋がると思いますので、僕自身もそのことを念頭におきながらリーダーシップについてまだまだ学びを深めていきたいと思います。

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