資源・エネルギー・環境教育雑記帖(15)〜教科書で扱われている資源・エネルギー・環境(中3理科・エネルギー利用における課題)〜
2023年より、資源・エネルギー・環境教育の推進に深く関わってきました。
この分野への興味を抱き、暇を見つけては関連する書籍を読み、研究を重ねています。
同じ関心を持つ仲間たちと立ち上げた研究会では、教育における資源・エネルギー・環境問題の扱いについて積極的に議論を交わしています。
この不定期連載では、教科書に記されていることを踏まえ、中学校及び高校での資源・エネルギー・環境に関する教育内容をご紹介します。
エネルギー資源の可採年数
エネルギー資源はエネルギーを生み出す資源のことで、その埋蔵量には限界があります。
エネルギー資源を使える限度は可採年数で示され、これは現在の技術で使用可能な資源の確認された埋蔵量を、1年間の消費量で割った値を指します。
出版社によって若干数値は異なるものの、中学校3年の理科の教科書では、エネルギー資源の可採年数は以下のように示されています。
石油:50〜51年
石炭:134〜153年
天然ガス:53年
ウラン:99〜102年
化石燃料の使用と課題
大気汚染
石油、石炭、天然ガスをまとめて化石燃料と呼び、これらの燃焼によって硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が発生します。
これらは大気を汚染し、自然環境や生物に悪影響を及ぼします。
地球温暖化
化石燃料の燃焼は、大量の二酸化炭素(CO₂)を発生させます。
二酸化炭素は温室効果ガスの一つで、大気中で熱を保持する働きがあります。
化石燃料の大量使用によって生じる大量の二酸化炭素は、地球全体の気温上昇に寄与し、生物や環境に影響を与えると考えられています。
特に、海水面の上昇によって低地が水没するリスクがあることが、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の増加が原因であると言われています。
原子力の利用と課題
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉が破損し、放射性物質が流出しました。
その結果、原子炉の安全基準の見直しが行われました。
原子力発電の利用においては、放射性物質と使用済み核燃料の処理が大きな課題です。
流出した放射性物質は土壌、水、農作物、水産物を汚染し、人類に健康被害を及ぼす恐れがあります。
また、使用済み核燃料は、1000年以上も強い放射線を出し続ける物質を含んでおり、その処分方法は大きな課題です。
放射性物質と放射線
現実として、原子力発電の利用は賛否両論ありますが、中学校3年の理科の教科書では、放射線と放射性物質について中立の立場から科学的にその特徴を紹介しています。
放射性物質
放射性物質は放射線を出す物質です。
ウランなどが代表例ですが、多くの食物やヒトの体内にも放射性物質が存在します。
例えば多くの食物にはカリウム(カリウム40)が含まれています。
また、ヒトの体内ではカリウムだけでなく、炭素(炭素14)やルビジウム(ルビジウム87)などが含まれています。
放射線の種類
放射線には、自然界に存在する自然放射線と、人工的に作られた人工放射線があります。
中学校3年の理科の教科書では、α線、β線、γ線、X線、中性子線を放射線の代表例として紹介しています。
これらは物質を透過する能力によって分類されています。
表には示していませんが、中性子線は水やコンクリートに吸収されます。
放射線の性質
放射線は目に見えず、物質を透過する能力があり、原子をイオンにする電離作用をもちます。
放射線の単位
放射線の単位にはベクレル(Bq)、グレイ(Gy)、シーベルト(Sv)があります。
ベクレルは放射性物質が1秒間に1個の割合で変化して放射線を出すときの放射能の大きさを表します。
グレイは放射線を受けた物質1kgが1Jのエネルギーを得たときの大きさで、シーベルトは放射線が人体に与える影響を表します。
また、γ線やX線では1Svがほぼ1Gyであると紹介されています。
放射線の人体への影響
放射線を受けることを被曝といい、内部被曝は呼吸や食事などで体内に取り入れた放射性物質から放射線を受けること、外部被曝は体外から放射線を受けることです。
日本ではヒトは年間平均2.1mSvの自然放射線に被曝していると言われています(世界平均では2.4mSv)。
生物が強い放射線に被曝すると、細胞やDNAが損傷する可能性があり、被曝量が多い場合、細胞やDNAが回復せず、がんなどの症状を引き起こしたり、死に至ることもあります。
不要な放射線を浴びないようにするために
放射線の被曝から身を守る方法として、放射性物質から離れる、放射線を遮る、放射性物質の近くにいる時間を短くするという3点が教科書に示されています。
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