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「お願い」では、モノは買えない。

携帯電話のキャリアを変えたときの話です。


もともと、携帯会社の見直しをしようと思っていたところでした。ある日、お店の前を通りかかった時に声をかけてくれた店員さんが非常に熱心だったので、そのまま話を聞くことにしたのです。

私は昔、営業の仕事をしていたことがありました。そういうこともあって、自分が「営業される」側になるのがなんだか新鮮で。しかも店員さんが必死に頑張っているのがよくわかったので、応援したくなったんです。
本当はその日は話を聞くだけのつもりだったけど、せっかくだし、と思って契約することにしました。

ちなみに私は家計簿を1円単位でつけるくらいには倹約家。携帯電話のキャリア変更後も、今使っている携帯電話を使い続けることに決めていました。

一方、キャリア変更の際に店員さんは、携帯電話を新しくすることを強くおすすめしてきました。料金も今とたいして変わらないし、キャッシュバックもあるし、などなど。ちょっとゴリ押しが強いな、と思いつつ、私はそれをお断りしました。

まあ、向こうも少しでも成果を出すのが仕事ですから、営業するのは当然です。それはわかります。

いよいよ契約になりました。書類を書いたりしていく中で、もう一度プランの話が出てきたのですが、
その店員さんはめげないことに、再び私に新しい機種を買わないかと提案してきたのです。
もちろん私はお断り。
それから、関連事業のプランに入ると安くなるやら、それがないと割引が減ってやら、いろいろ説明してくれたのですが、全部予定になかったので私はお断りし続けました。

そして最後の最後に、店員さんは「最後に一つだけ、お願いしたいんですけど」と言って、とりあえず小さなオプションをつけてほしい、すぐやめていいから、と提案してきたのです。

これには私も思わず、「いいです。お願いでモノは買いません!」

と言ってしまいました。


営業たるもの、商品ちゃんと説明して堂々と勝負せんかい!
という気持ちが胸に湧き上がっていました。


と同時に、営業時代によく使われていた話法に
「お願い話法」
というものがあったことも、そして自分がそれを使ったことがあることも思い出しました。


「一つだけお願いなんですけど」
といって、負担にならないであろう程度の小さな契約をいただく。
小さくても、成果は成果。
何かしらの「目標」を背負わされた営業にとって、成果が一つあるのと全くないとでは、天と地ほどの違いなのだと知っている。

それだけに、「お願い」の切実さはよくわかった。
しかし、いち消費者として、やっぱり「お願い」ではモノは買えない。


結局、私が当初から計画していたとおりの変更をかけていただいて、一連のやりとりは終了しました。

「お願いでは、モノは買えない・・・」

自分で発したことばが、自分の過去を切なく照らし出しました。

「お願い」と言われた人たちは、どんな気持ちだったんだろう。
「お願い」と言われて契約した人は、どんな気持ちだったんだろう。


昔は「お願い」が、商売市場にもっとゆるやかに受けいれられていたのかもしれないけれど、今は違う。
ネットでは比較サイトやレビューが探せばいくらでもある。消費者はもっと良い商品を得るためにリサーチを重ねて、少しでも良いものを手に入れようと、賢くモノを選ぶ時代。
自分にとってメリットがないものを、「お願い」されて買うはずがない。
お願いの時代は、終わったな。


ああ、相手の役に立てることを提案して、ちゃんと営業できるようになろう。

店員さんに過去の自分を重ねながら、そんなことを思った夜でした。





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