数年ぶりのローライ35S
久しぶりに、フィルムカメラを持って出かけることにしました。十数年前に手に入れたローライ35Sです。とても気に入っている1台だったのに、この数年はこのカメラで写真を撮ることがなくなっていました。
というのも、あるときから急にカメラの具合が悪くなってしまい、鏡銅を引っ張ってカチッと回すことができない(ローライ35は、それをすることによってシャッターを切ることができるようになります)、また、そこを何とかクリアしてもシャッターが下りないという状態になってしまったからです。ちょうど高画質・多機能化が進むデジカメの手軽さに惹かれていた時期だったこともあり、ローライ35Sは、時々ケースから出して「もしかして直ってないかな」とあるはずもない期待を無駄にかけるだけになっていました。
そして今年になり、持ち物をいろいろと整理する必要が出てきたとき、このカメラをどうしようと真面目に考えなくてはならなくなりました。久々にフィルムの値段を確認してみたら、数年前も兆しはあった価格の高騰がとんでもないことになっています。以前は街中のカメラ屋からドラッグストアまで、いろいろな場所で受け付けてくれたフィルムの現像も、かなり場所が限られているようです。フィルムカメラへは完全に「時代の遺物」になってしまったようで、そこに吹く逆風は私の予想を遥かに越えて強まっているようでした。
そんな中で、フィルム代・現像代というランニングコストを抱えてまで壊れた銀塩カメラを持ち続けていくべきか?レンズはきれいだしボディも無傷ではないとはいえまあ美品と言えるレベルなので、中古カメラ店やオークションサイトに出せば幾らかの値段にはなるはず…。そんなことが頭に浮かびました。
でも、このカメラをケースから取り出して眺め、コンパクトな見た目からは意外なほど重量があるボディを触っていると、万年初心者ながら10年以上いろんな場所を一緒に訪れたこのカメラを簡単に手放す気にはどうしてもなれませんでした。愛着の度合いが、数年で次々に新しいモデルが出るデジカメとは比べ物にならないほど強かったのです。
そこで、ある日山歩きに行くときに、故障していることは承知でこのカメラを持って行ってみることにしました。この数年好きになってきたハイキングやランニングに、コンパクトデジカメとさほど変わらない大きさのローライ35Sを持って出かけたら、どちらにも新たな楽しみが生まれるのだろうかと試してみたかったのです。もちろん、故障しているローライ35Sで写真を撮ることはできません。でもこのカメラは、小さいけれどレトロな存在感ばつぐんで、被写体としてもとても優れています。道端の倒木の上にそっと置いてみるとピタッとはまり、これは自然の中で使ったらとても楽しいカメラだと相性のよさが直感的に伝わってきました。
その場で私は、このカメラをどうにかして使い続けていこうと決めました。山や森の中を歩いたり、のんびりランニングしたりする際にこれを持っていけば、きっとすごく楽しいことになるはずだと思ったのです。
とはいえ、実際にそんなことをするには大事なことをクリアしなければならいません。故障したカメラの行く末や、これまでに撮った写真などを、少しずつ記していこうと思います。
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