笑い方[700]
今日はいつもより早く帰った。
『ひとりサマータイム』始動。
8月まで就業を、1時間ずらすことにした。
帰りがけ、でもそれは通学路に迷い込んだ孤独。
私の隣に飛び込んできた男子学生は、友人数人と
普段通りのおしゃべりを楽しんでいるようだった。
ころころと移り変わる話題。
ころころと響く笑い声。
とても楽しそうですね、
そう思わされた。
止まったり動いたり
止まったり動いたり
幾度か繰り返した頃合いに
ふいに小物をまだ携帯しているか気になり
右腿を浮かせて、手探りでポケットを確認した。
(やっぱり。中身を落とすなんてそうそうないよな。)
ちょうど座り直したタイミングで
隣の学生がスマートフォンを取り出した。
傾き出した肩が
私とぶつかって
彼の言葉が途切れたのがわかった。
他愛のない話の続きが
このまま消えてしまう!
こちらを覗く彼に
疲れた微笑みを見せた。
大丈夫ですよ
こちらこそごめんなさい
1秒にも満たないそれが、やけに記憶に残った。
ただそのまま、次に揺れが収まるのを待っていた。
彼は話をやめた。少し考え込んだ。
そして、何度か様子を伺う。
何か気づいたのかな?言い忘れたことがある?
ぼんやりしているのにも飽きてしまって
彼の今日の記憶。同じように残るだろうか。
いつの間にか眠りに落ちていたみたいだ。
乗り過ごしなんて今年もしない。
だけど、過ぎていく景色は、いつも見るクラスタだ。
もう制服は見当たらない。
こちらを見る人も、いなかった。
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もっといろんな環境を知りたい!!