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[weryfikacja 検証51~65] ”ossiaとして” ではない - ノクターン第2版
監修者の先生によって「ossia と」が「ossia として」に変更され、出版。
51.
演奏に関する解説
楽譜に関する注意(各巻共通部分)
![](https://assets.st-note.com/img/1686949544641-SKiq09w1UB.jpg?width=1200)
2020年2月の締切時に訳者5名が原稿を提出した際、この各巻共通部分「楽譜に関する注意」で ossia「として」と訳した人はひとりもいませんでした。 原文からそのまま訳せば ossia「として」にはなりません。
英訳はどのようになっているのでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1686949593861-Ic381pKrZM.jpg?width=1200)
この部分の英訳は(上の画像のように)何種類もあり、巻によって違います。もしかすると監修者の先生は as にとらわれていらっしゃるのかもしれませんが、 ossia「として」という訳は原文とは違う。これは「ossiaとして」という意味ではありません。
「こう弾くこともできるよ」という“別の可能性”がヴァリアントです(「異稿」と言ってよい場合とそうでない場合があります)。 ossia「として」という訳ではなぜいけないのか。
ossia「として」という訳がおかしいのは、 ossiaという表示があるヴァリアントも、表示のないヴァリアントも 実際どちらも「ossia (こう弾くこともできる)として」ということに 変わりはないからです。 原文の意味は ossia 「として」ではない。ossia と「記された」「表示された」と書かれているのです。
ヴァリアントの種類を示すために、ossia の表示のあるものとないものに分けているに過ぎない。どちらも「ossia として」です。ヴァリアント(別の可能性)なのですから。
原文をそのまま素直に理解できていれば ossia「として」という訳にはなりません(翻訳メンバーのうち、この共通部分の文で「として」と訳した人はいない)。 監修者の先生は、原文を理解しないまま (全巻とも)正しくない訳にして世に出してしまっている。ノクターンだけでなく全巻を直す必要があります。
ノクターン第2版では「ossiaとして」という不適切な訳が10か所以上見られます。 弾く上ではとくに困らないでしょう。しかし読んだ人は「ossiaという表示がなくても、ヴァリアントなのだから当然『ossiaとして(こう弾くこともできますよと)示し』ているのに、おかしいな」と思います。
52.
演奏に関する解説
楽譜に関する注意(各巻共通部分)
![](https://assets.st-note.com/img/1687116802543-8Nreq0h9aE.jpg?width=1200)
第1版・第2版ともに適切ではありません。第1版の[訳注](実際は監修者注)は不要。
それだけでなく、「w ten sposób/こう/このように」を勝手に省いてしまっている 。「文章的に、なくても同じように読めます。」という担当者の方のお考えは誤りです。なぜなら、省いてしまったことで「ossiaと書かれた」ことを指すのか「ヴァリアントが書かれた」ことを指すのか、まるでわからなくなってしまっているからです。省いてはいけない。
監修者の先生はこの省略を認めてはいけないのに、ポーランド語の原文をお読みになれないため 正しい判断ができない。つまり“監修”できていない。
担当者の方が校正の段階でこのような “勘違い” をなさることは当然起こり得ます。何も恥ずかしいことではない。しかし(原文の意味が通じなくなるため)当然 訳者が受け入れなかった(2021年3月)この省略を、(2020年3月~2021年6月の“監修”期間の後)原稿最終提出(2021月6月14日)後に何も知らせず勝手に強行し、そのまま出版するのはあり得ません。大変な迷惑を被るのは楽譜を買ってくださる方々なのです。正しくないのですから。
第2版でももちろん「として」という訳は適切ではありません。「w ten sposób oznaczone このように/こう(= ossiaと)記された」、つまり原文は ossiaと記された/書かれたことを言っているのに、この訳では「書かれた」のはヴァリアントだということになってしまっている。違います。これは正しい意味ではない。
「書かれた」のは ショパンが ossia と記していることを言っているのです。(ショパンが自分で ossia と書いたのは1度だけ、出版には出さなかった変イ長調のワルツにおいてです。Special thanks: カミンスキ先生)
素直にそのまま訳すべきです。
53.
原資料に関する解説
ノクターン ヘ長調 作品15の1, 第27,29,39,41小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1682454740465-VVQCs05nUN.jpg?width=1200)
「 ヴァリアント ossia は 」「ossiaと記された/表示されたヴァリアントは」 です。
54.
原資料に関する解説
ノクターン 嬰ヘ長調 作品15の2, 第8小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687125374933-ukvYXSoWJO.jpg?width=1200)
55.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第1小節(左手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687190788662-7xnANgp4Av.jpg?width=1200)
56.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第21小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687175436255-iK2W1mMg0E.jpg?width=1200)
57.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第28および30小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687183240851-QiNX4jLBHV.jpg?width=1200)
58.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第38小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687191359727-qKtDKv5OKY.jpg?width=1200)
59.
原資料に関する解説
ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第59~60小節(左手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687200479882-8iSAwmPnug.jpg?width=1200)
60.
原資料に関する解説
ノクターン 変イ長調 作品32の2, 第1小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687202381201-COamEvSu0f.jpg?width=1200)
61.
原資料に関する解説
ノクターン 嬰ヘ短調 作品48の2, 第113小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687203837447-l7nupfaWJq.jpg?width=1200)
62.
原資料に関する解説
ノクターン 変ホ長調 作品55の2, 第35小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687206642187-DYfBZkj68I.jpg?width=1200)
63.
原資料に関する解説
ノクターン ロ長調 作品62の1, 第70小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687208061364-54rJ79M6c9.jpg?width=1200)
64.
原資料に関する解説
ノクターン ロ長調 作品62の1, 第72および74小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687209222073-MzkfXzc126.jpg?width=1200)
65.
脚注
ノクターン ヘ長調 作品15の1, 第27,29,39,41小節(右手)
![](https://assets.st-note.com/img/1687222038192-9ABJ7ZY1xo.jpg?width=1200)
「ossiaとして示したヴァリアント」という訳は「ossiaと記されたヴァリアント」と一見同じように思えるかもしれませんが、違います。
ossiaという表示があってもなくても「ossia (こう弾くこともできますよ)として」ということに変わりはない。ヴァリアントであれば「ossiaとして」私たちは弾くことができます。ここでは「ossiaと表示」されているかいないかを言っているのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1689966080544-n3TUFx2zWd.jpg?width=1200)
書かれていない(without ossia)場合があることを言っている。
どちらも「 ossiaとして」であることに変わりはない。
原文は「ossiaとして」ではなく、
・ossiaと記された/書かれた/表示されたヴァリアントは
・ヴァリアント ossia は
と書かれています。ossia と表示されていないヴァリアントも、ossia 「として」です。全音第2版の訳は原文の意味を正しく伝えていない。つまり読者が正しく理解することが難しい。原文が言っていることはごくシンプルなのです。
Special thanks: ◯◯◯◯先生(音楽学者)
ノクターン第2版、スケルツォ、ワルツ(A)他の検証をまとめた ↓ (44ページからなる)検証サイトはこちらです:
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