【北欧図書館・最前線1】スウェーデンから:春のゲリラ読書
<スウェーデン図書館協会のニュース記事から>
4月23日はユネスコが定めた「世界本と著作権の日(World Book and Copyright Day)」。この日、スウェーデンのカトリーネホルム図書館(Katrineholms bibliotek)の司書数名が恒例となった「春のゲリラ読書」のために、自転車の荷台に本をたくさん積み込み図書館を出発した。スウェーデンの4月は気候がまったく読めない。20度まで上がる日があれば雪が降ることもある。この日は強風で気温もかなり低かった。
「ゲリラ読書」とは司書が街頭に出て読書する姿をみんなに見てもらってできれば真似してもらうというパフォーマンス。このアイデアはスウェーデンの1日でおそらく最も重要な時間であるフィーカの最中に発案された。(北欧公共図書館の新しいプログラムやイベントはこうしたお茶の時間に考え出されることがとても多い)。
「最近、ただ座って本を読んでいる人を見かけなくなった」というある司書の発言から、それじゃあ「私たち司書がただ座って本を読んでみよう」という具合に話が発展した。そこで冗談めかして出された「ゲリラ読書」という名前はそのまま活動名として定着した。そして2023年4月にはじめて敢行された「ゲリラ読書」は、読書推進のベストプラクティスとして「世界図書と著作権の日コンテスト」で表彰されたのである。
スマートフォンが普及する前は電車の中で本を読んでいる人をよく見かけたが、その姿がスマートフォンの利用に取って代わられてしまったことを世界中の司書は憂慮している。だから「ゲリラ読書」のポイントは「読書 本を読む という行為を目に見える形で」示すことだという。図書を荷台に積んだ自転車とともに街に出た司書は、思い思いの場所に散らばって「ただ本を読む」。そして道ゆく人に「本を読む」ということ自体を思い出してもらうのだ。興味を示した人には図書館から持ってきた本をその場で提供する。
世帯収入、教育レベル、子どもの成績が全国平均を下回り、失業率や疾病率が高いカトリーネホルム図書館では、数年前から読書に重点を置いた活動を通して、社会課題に挑戦している。北欧の公共図書館では一般的にITサービスをかなり重視していて手厚いチュートリアルを提供しているのだが、カトリーネホルム図書館では思い切ってこうしたITサービスを縮小することで、サービスの主体を読書支援に戻すことを決意した。そして読書推進活動に力を入れた結果、利用者からも本に関する質問が増えたことが報告されている。
出典:Annika Clemens, Prisad gerillaläsning ska locka till böckerna, https://www.biblioteksbladet.se/nyheter/reportage/prisad-gerillalasning-ska-locka-till-bockerna/
*上記のウェブサイトには街で「ゲリラ読書」するカトリーネホルム図書館司書の実際の様子が写真で紹介されています。