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かえるくん

かえるくん。

ふとしたときに思い出す、コロ助の真似をする甘ったるい声。好みの女性に媚びた態度。触れられなくてよかった。奴のことを覚えているということは、あの日相当ショックを受けたか、怒りが込み上げたか。

正確には不快感。

奴のぴょんぴょん跳ねたような心がありありと伝わってきて、この店に連れて来てくれた先輩を一瞬憎んだ。あからさまに公私混同する接客は嫌い。目の前しか見えていないのね。わたしはお金を払って嫌な思いをした。ドリンクが美味しかった記憶もない。

かえるくん。仕事中酔っていたのかしら。何度も彼女に"かわいいなり〜"と目を見て言っていたわ。帰り際彼女にジャケットを着せてあげてもいた。酔った男はどうにかして触ろうとしてくるものね。わたしはその辺に掛けてあった自分のものを取って着たわ。それに気づいて焦った奴に何か言われた気がするけど気持ち悪くて覚えていない。

私は苛立っていた。まだまだ外見が強い社会だもの、そんなこと当たり前にあることよね。じゃあサービス料返してくれる?逆にこちらがサービスしたわよ。彼女ばかりと話すかえるくんと先輩の間に挟まれて、随分気を遣ったわ。それにコロ助の真似をするせいで、気持ち悪くてお酒の味もよく分からなかった。

なんてことを思い出して考えてしまった。あのキモ男を上手に扱った彼女は結婚して子どももいる。私はパートナーすらいない。

でも、それでいい。こんな経験が増えるたび、苦手な男も増えていく。それもいい。ぴょんぴょん跳ねまくる落ち着きのないコロ助真似男なんてこっちから願い下げよ!

スッキリしたわ。ね、あなたもこんな経験ある?
今度私と飲みに行かない?

"負け犬の遠吠えだろ"なんて言う男がいない場所に。

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