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声と色 -緑-

君の声を奪って逃げた。
探していたんだ、ずっと前から。

緑、君の色を探していた。

川のようで、ときには葉のような不思議なエロスを感じる。そんな色。

口に含んだら溶けてなくなるかと思った。
それは舌の下に潜り込んでしばらく動かなくなった。取り出そうとしても隠れてしまう。格闘しているうちに可愛らしく思えてきた。味はない。音もしない。見えないから鏡にも映らない。

でもちゃんとある。せめて味があればなんて、欲張り。君を感じることができるだけでよかった。それが今は閉じ込めたいとまで思っている。新しい音を生み出すまで、この声を味わい尽くして、その後は……。

私の色は何色なんだろう。君は今味わってくれているのだろうか。やっとここまで辿り着けたから、失敗したくない。何十年も探し続けた、理想の声色。だから、もう少しだけ時間がほしい。その音が生まれたらすぐに描くから。それから急いで君に返しに行く。本当は君ごと食べてしまいたい。でもそんなことはしない。君は美しい。また春になれば芽を出し、濃くなり、風を受け、水に浮かんでくれる。

また鏡を見る。私は昔川だった。山と海を繋ぐ、優しくも厳しい表情。君の声が溶けた。

舌を見た。くっきりと葉の形が残っている。急がなければ。絵なんて頭にいくらでも描ける。もう出来ている。

ガチャ。

靴を履いていたら、君が来た。びっくりする間もなく抱きしめられて舌を奪われる。同類だ。もう何も考えなくていい。ただ流されて、揺れていればいい。

嵐のように君に動かされ、声をなくしたと思ったら元に戻った。生まれた音はたぶん風の音。あの日のように2つを繋いだ美しい音。

欲張りな私たちはきっと色が足りなくなる。そのときはまた欠片を探して思い出す。混ざり合って生まれて、元に戻って。

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