気づきを深める問いのレッスン その1. 思考に向かう問い、感情に向かう問い
今日はファシリテーターの肝といって言い、問いかけについて書いてみます。
私は、自分が主催する場のほとんどが対話をする場なので、どのように問いかけをするかが場の質を決めると言って良いくらい、問いかけは大切。
noteで何度かに分けて、私が問いかけを考えるときに意識しているポイントを紹介します。今回は「思考に向かう問いと感情に向かう問い」
問いかけをするときに、その問いかけがその人の考えていることを揺さぶるのか、感じていることを揺さぶるのか、そのどちらを意図するかを考えます。
考えていることを問いかけても、自分の気持ちを語る人はいますし、気持ちを問いかけても考えを答える人はいるので、必ずこの問いは思考に向かう、感情に向かう、というものはないのですが、それでも対話の場の設計をするときには「意図」を持って設計することが大切。
人によって「!」となる問われ方は異なるので、いくつか考えて置くようにしています。そして、どのように問いかけるかはその場がどうして開かれているのか?から考えます。
そもそも、その場の狙いは何か?
問いかけ自体には、良いも悪いもありません。でも対話の場を開くときには、何かしら狙いや願いがあって開かれるもの。問いかけもそれに沿って設計していきます。
今回は、私が主催している死をテーマにしている「死の対話」という対話の場を例にしますが、この場は
死ともう一歩仲良くなることで、生きることが手繰り寄せられ、自分の中でその感触が変わること。
を狙いにしています。
主催者の私たち2人には、自分がどう死にたいかなど、死について話すことは「どう生きたいか」に意識が向くという仮説があります。
よって、死について話すことは「どうやって生きていきたいですか?」と問いかけるよりもずっと自分がこれを大切に生きていきたい、に気づきやすいと思っているんです。
なので、参加の前後で死というテーマへの感じ方が少しでも前向きに、扱いやすい、これまでよりも共にいやすい感触になっているといいなという気持ちがあるため、問いかけに「感情に向かう問い」をいれるようにしています。
感情に向かう問いかけとは?
死の対話では、チェックイン (最初に行う、一人一言ずつ話をする時間) の問いかけは
「死という言葉を思い浮かべたとき、あなたの心の中に何が起こりますか」
にしています。
これは、感情に意識を向けてもらいたいという意図を持った問いかけですね。 ( これまで「今日なぜこの場に参加してくださったのですか?」、とか「死についてどのような関心がありますか?」など色々試しているのですが、死はネガティブなイメージを持つ人が多いので、外から問いかけないと感情に意識を向けない人がいます。また逆に、自分の身の回りの体験談を長々話す人もいるため、毎回改善していって今はこの問いかけを使っています。)
これが、「あなたは死をどのように捉えていますか」とか「なぜ、死について話す場が必要なのだと思いますか」だともう少し、思考に向かいやすい。どちらが良い、とかではなく場の狙いと参加者の様子を見て柔軟に変える必要があるという話です。
同じ死を扱うテーマでも、参加者が死について全然考えた事がない若い人ばかりだったら「心の中に何が起こりますか?」という問いかけではなく、「あなたが「死に出会った」エピソードを思い出してみてください。それは、あなたにとってどんな体験でしたか?」というように死という体験そのものを、その人の中に持ってくる問いかけにするかもしれません。
思考に向かう問いかけとは?
そして、死の対話では、対話を行なった後振り返りの時間をとっています。
その時の問いかけは
ここまでの話の中で、心に残ったことは何でしょうか。気づいたこと、覚えておきたいことを書いてみてください。
それは、あなたにどんな変化をもたらしましたか。
にしています。
最初よりも少しだけ思考に向かう問いかけにし、そこまでの対話→振り返りを元に全員で対話をする時間を持っています。(この最後の対話の中で、いろんな人の声を聞くことにより、その人の中での死の感触、捉え方が変わることを狙っている、という設計)
どう捉えた?何が変化した?どんな風に考えた?どんな影響を受けた?相手との違いは?などは思考に向かいやすい問いかけですね。
問いかけに込める「意図」はファシリテーターがその場に込める願いのようなものだと思っています。私は、一緒に開催する人とアレコレ問いかけを練るのが大好きです。
今回は、問いを考える視点の1つとして、思考に向きやすいか?感情に向きやすいか?を紹介しました。また別の機会に、他の視点もご紹介したいと思います。
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