旅先での忘れられない出会いの話
美術館という空間の魔力
美術館。それぞれが想い想いの方向を観て、違うことを感じる場所です。静かな空間で、自分の感情に目を向けることができる場所です。
順番に一つ一つじゃなくても、解説なんて読まなくても、気になった絵の元へ軽やかに駆け寄ってみてください。理由はわからないけれど、心が浮き立つ絵画があって、そんなあなたの隣には、同じように目を輝かせた人が立っています。
美術館はあなただけのお気に入りが見つかる場所です。
今日は、私が好きな美術館、ロンドンにあるナショナル・ギャラリーでのお話です。
ゴッホの「ひまわり」、ヤン・ファン・エイクの「アルノルフィニ夫妻の肖像」など…、美術の教科書で見たことのある絵を間近で見れる場所です。
Do you like this picture?
ジョルジュ・スーラ「アニエールの水浴」を知っていますか?
教科書で見てから、なんとなく好きだったこの絵をいつか実際に観てみたいと思っていました。
ナショナル・ギャラリーでこの絵の目の前に立った時、本当に感動して、その場からしばらく動けませんでした。
私の隣でしばらく絵を観ていた男性が私に優しく聞いてくれました。
Do you like this picture ?
yes… としか言えない私にゆっくり微笑んで、彼は me too. と言ってくれました。
そしてまたしばらく一緒に絵を観て、満足した私たちはほとんど同時にその場を離れました。笑顔でその人と別れた思い出を今でも心の深いところにしまっています。
いつかまた
いつか誰かが、私の隣で、一つの絵に心を奪われている瞬間に立ち会った時、隣で一緒にしばらく眺めて、Do you like this picture? と聞こうと思います。
受け取ったものを還して、繋いでいくことで、いつか世界が繋がると信じています。
それではまた、どこかの美術館で会いましょう。