ロンドンにおける日本語教育の現状
な~んて。タイトルを広げすぎた感じがありますが。
そもそも私はほとんど横のつながりはないので、あくまで、イチ日本語教師の感じたことだと思っていただければ幸いです。
*このnoteは主に「これから日本語教師になりたい方」、「ロンドンで日本語教師をしたい方」「海外の日本語教育に興味のある方」向けに書いております。
日本語教育に対する需要(そもそも需要なんてあるの?)
他国と同様、イギリスで日本語を習っている人といえば、大きく分けると下記のようになると思います。
1.小中高等学校などイギリスの教育機関で外国語として学ぶ子ども
2.補習校などで母語教育の一環として学ぶ子ども
3.大学などの高等教育機関で専攻や一般教養で外国語として学ぶ人
4.大人
数字に関して言うと、やはりアジア圏に比べれば圧倒的に少ないです。(正確な数字など知りたい方は国際交流基金のデータをご参照ください。 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/ )
イギリスと日本の関係は良好だと感じていますが、やはり子ども、若者が、積極的に学びたい・学ばせる、という優先度としては、残念ながら日本語は高くないでしょう。
じゃあ需要は高くないんだ……
と思われるかもしれません。
でも、実は私はそうは感じません。
特に、 4.大人 に関しては、まだまだ増加させる余地がある。学習者になってくれる人たちが隠れていると思います。潜在的な需要、といっても良いかもしれません。
その理由は、この国の日本へ対する「好感度」、興味といっても良いかもしれませんが、それがかなり高いと感じるからです。
たとえば、地下鉄の駅に、日本旅行を勧めるポスターが貼ってあります。
街で配られているフリーペーパーには、必ずどこかに日本食レストランや、日本関連の情報が載っています。
イギリス人が日常買い物に利用するスーパーに、醤油だけでなく、みりんや米酢なんかも置いてあります。
日本好きな外国人、というと漫画やアニメのファンがすぐ頭に浮かびますが、ここまで生活に密着したところに「日本」があるというのは、それだけ平均的なイギリス人にとっても、日本は興味をそそられる話題なのではないでしょうか。
(余談ですが「日本が好き」なイギリスの大人たちは、経済的に余裕がある人が多いと感じます)
特に、去年はラグビーワールドカップがあり、今年はオリンピックもありますから、普段は日本になんて興味がない、という層も取り込める可能性があります。
学習者の傾向(なんで日本語を勉強してるの?)
まだまだ学習者(になってくれる人)が隠れていると思われるロンドンですが、では実際に勉強している人はどんな人か。
彼らが日本語を勉強する理由は様々だと思いますが、簡単に
- 生活に日本語が、 ”必要” or ”必要じゃない”
- 仕事(学問)上日本語が、 ”必須” or ”必須じゃない”
と分けられると思います。
日本国内やアジア圏なら、”必要”、”必須” の割合が高いのかと思います。
しかし、ロンドンでは断然 ”必要じゃない” "必須じゃない” 人が勉強していることが多いです。
そう、彼らは趣味で日本語を勉強しているのです。
「漫画が好き」「日本食が好き」「歴史が好き」「言葉の勉強が好き」「配偶者が日本人」「ネットフリックスで見た日本のドラマが面白かった」「日本へ旅行に行ったら楽しかったから」
入り口はいろいろですが、このように、日本語を話す必要がない人が、趣味で勉強している割合が高いのが、ロンドンの、ひょっとしたら欧米圏の学習者の特徴かもしれません。
日本語教師の働き方(先生はどこで働くの?)
「常勤」「非常勤」「日本語学校」「専門学校」「企業派遣」「プライベート」etcetc...
日本語教師の働き方は千差万別ですが、先述したように、ロンドンでさえ国内やアジア圏に比べると、マーケットは広くないです。
またまた国際交流基金のウェブサイトを見ると、日本語を教えている機関のリストが見られます(こちら→ https://www.jpf.org.uk/language/listofschools.php )
「これからイギリスで働こう!」と思った時に、いきなりイギリスの小中学校や大学に勤務する、というのは(有資格者でもない限り)あまり現実的ではないので、多くの人は上記リストでいう「non-school education」つまり、学校教育以外の場で教えることになります。
それが、いわゆる「日本語学校」です。
とはいえ、先述したように、イギリスでは趣味で勉強している人がほとんどです。ですから、そういう学校は国内の日本語学校のように、週5日間毎日みっちり授業がある、というわけではありません。(生徒にビザを発給する必要もありませんし)
イメージで言うと、日本の英会話教室のような形態でしょうか。
(ちなみに、上記リストにある学校の半数以上は日本語専門ではなく、英語など他の言語のコースが主流の学校です)
これらの日本語学校ですが、先ほどの国際交流基金のリストを見ると、ロンドンに絞れば20校もありません。母語教育として子ども相手に教えている学校を含めても、30校未満です。
これを多いとみるか少ないとみるかはともかく、就職の口としてはかなり狭いと感じます。
また、これらの学校でも毎日朝から晩まで授業があるとは限らないので、実際これらの学校に勤めている先生でも、他の仕事などとかけもちしている人が多いのではないでしょうか。
この状況を鑑みると、おそらく、ロンドンで日本語教師をしている人の大多数は、
「プライベートチューター」
として活躍しているのではないかと思います。
自分で生徒を探し、自宅やカフェ、図書館、生徒の職場などで教えるんですね。
特にビジネスマン相手ですと、ロンドンの会社は福利厚生の一環として語学のレッスン費用を会社が出してくれるところや、会社で先生を雇って、昼休みや就業後にレッスンを開催しているところなども多いですから、経験やツテがあれば、カフェなどで教えるより(こう言っては何ですが)高給も期待できます。
しかし、ここで問題になってくるのが、そう
就労ビザ
です。
正直に申しますと、イギリスで就労ビザを取るのはなかなか難しいです。
そもそもイギリスの就労ビザは、会社側が「スポンサーシップ」というものを持っている必要があり、時間もお金もたくさんかかります。
それだったら、わざわざ日本からビザを取って人を雇うより、
「イギリス国内に住んでる資格持ってる人(たくさんいます)を雇お~」
となってしまうのです。儘なりませんね。
まとめ
・ロンドンでは、生活や仕事に必要だからというよりも、趣味で日本語を勉強する人の割合が比較的大きい。
・そのため、「学校」での教育というより、「個人」で/に 教える仕事が多い。
・ビザを取るのは難しい。
(*「それでもどーしてもイギリスで働きたい!」という方のために、イギリスの就労ビザに関しては、今度別noteで少し書こうと思います)