二項定理
今日は,簡単な二項係数について取り上げる.
導入
$${n!=n\cdot(n-1)\cdot\cdots\cdot 2 \cdot 1}$$と定め,$${0!=1}$$と定める.このとき,自然数$${n}$$,$${0}$$以上の整数$${k}$$に対し,
$$
\begin{pmatrix}n \\k\end{pmatrix}:=\frac{n!}{k!(n-k!)}
$$
と定め,これを二項係数という.これだけだと,自然数を自然数で割った数というだけで,名前の由来が分からない.
展開
次の命題を示そう.
任意の自然数$${n}$$に対し,
$$
(a+b)^{n}=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}a^{n-k}b^{k}
$$
が成り立ち,右辺の係数はすべて自然数となる.この命題を示そう.
数学的帰納法により示す.
$${n=1}$$のとき,$${(a+b)^{1}=a+b}$$で,$${\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}=1}$$となるから,上の等式は成り立ち,右辺の係数はともに自然数となる.
$${n}$$の場合上の等式が成り立ち,右辺の係数はすべて自然数となると仮定する.
$$
(a+b)^{n+1}=a(a+b)^{n}+b(a+b)^{n}\\=\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}a^{n-k+1}b^{k}+\sum_{k=0}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}a^{n-k}b^{k+1}\\=a^{n+1}+\sum_{k=1}^{n}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}a^{n-k+1}b^{k}+\sum_{k=0}^{n-1}\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}a^{n-k}b^{k+1}+b^{n+1}\\=a^{n+1}+\sum_{k=1}^{n}\left\{\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}\right\}a^{n+1-k}b^{k}+b^{n+1}\\=a^{n+1}+\sum_{k=1}^{n}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}a^{n+1-k}b^{k}+b^{n+1}\\=\sum_{k=0}^{n+1}\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}a^{n+1-k}b^{k}
$$
と計算される.但し,途中の二項係数の和の計算は,
$$
\begin{pmatrix}n\\k\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}n\\k-1\end{pmatrix}=\frac{n!}{k!(n-k+1)!}\left\{(n-k+1)+k\right\}=\frac{n!(n+1)}{k!(n-k+1)!}=\begin{pmatrix}n+1\\k\end{pmatrix}
$$
というように行う.この計算と仮定から,先ほどの計算した右辺の係数はすべて自然数となることが分かる.
故に,$${n+1}$$のときも上の等式が成り立ち,右辺の係数はすべて自然数となることが示された.数学的帰納法により,命題が示された.
これでとりあえず,二項展開した項の係数が二項係数に一致することが示された.
隣接した整数の積
二項係数はすべて自然数であることが示されている.このことを使い,隣接した整数の積は何の倍数かを調べよう.
$$
A:=n\cdot (n+1)\cdot \cdots\cdot (n+k-1)
$$
という,$${k}$$個の隣接した整数の積を考えよう.$${A}$$の表現を変えると,
$$
A=\frac{(n+k-1)!}{(n-1)!}
$$
と表すことができる.$${(n+k-1)-(n-1)=k}$$となるので,
$$
m:=\frac{A}{k!}=\frac{(n+k-1)!}{(n-1)!k!}=\begin{pmatrix}n+k-1\\n-1\end{pmatrix}
$$
となり,示したことから$${m}$$は自然数となる.故に,$${A=m\cdot k!}$$と変形されて,$${A}$$は$${k!}$$の倍数となる.
このとこから,隣接した$${k}$$個の整数の積は$${k!}$$の倍数となることが示された.たとえば,$${13\cdot 14\cdot 15\cdot 16}$$と見た瞬間$${4!=24=2^{3}\cdot 3}$$の倍数だということはすぐにわかるというわけですね.
このテクニックは,大学入試で整数問題なんかを解くときに頻繁に出てくるので,覚えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか.
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