見出し画像

入社から3年間で実践したデザインの輪を広げる取り組み②

はじめに

こんにちは、ユウです!🌼
前回のnoteでは、デザインの本質的価値の共有とヒアリングシートの作成について解説しました。第2回では、これらの基盤をもとに、どのようにしてデザインコミュニケーションを強化し、組織全体でナレッジを共有していったかをお伝えします。

前回のnoteはこちら▼
第1回は、「1.デザインの本質と価値の共有」「2.ヒアリングシートの作成」について紹介しています。

3. コンセプトシートの作成

ヒアリングシートの成功に続いて、私が取り組んだのがコンセプトシートの作成でした。この取り組みによって、デザイナーとクライアント、そしてマーケターの間のコミュニケーションがさらに深くなり、デザインの質と効率を大幅に向上させることになりました。

コンセプトシート導入以前、私たちは深刻な問題に直面していました。デザイナーがクライアントに直接デザインを説明する機会が限られていたため、デザインの意図や背景が十分に伝わらないまま、複数回の修正を重ねることがありました。この過程で、本来のデザインの目的が見失われ、結果的にクライアントの利益にそぐわないデザインが納品されるケースもありました。

具体的な例を挙げると、クライアントからの要望に応じて説明を追加していくうちに、当初最も伝えたかった情報の優先順位が下がり、何を伝えたいのかわからないデザインになってしまうことがありました。また、デザイナーが十分な検討を経て決定した要素が、その意図が伝わらないままに覆されてしまうこともありました。

このような問題を解決するために、私はコンセプトシートの導入を決めました。コンセプトシートは、デザインの初稿と共にマーケター・クライアントに提出され、デザインの意図や背景、そして各要素の重要性を明確に説明するツールとなりました。

この取り組みの効果は劇的でした。まず、クライアントの満足度が大幅に向上し、同時に修正回数も減少しました。デザインの意図を理解したクライアントからは、より建設的なフィードバックが得られるようになったのです。

さらに興味深いのは、修正が必要な場合の対応です。クライアントの希望に沿った修正案と、デザイナーからの新たな提案を併せて提出し、それぞれの意図を丁寧に説明することで、ほとんどの場合でデザイナーの提案が採用されるようになりました。これは、コンセプトシートを通じてデザインの背景にある思考プロセスを共有することで、クライアントとデザイナーの間に深い信頼関係が築かれた証といえるでしょう。

コンセプトシートの導入は、クライアントとの関係改善だけでなく、社内のコミュニケーション改善にも大きく貢献しました。マーケターもコンセプトシートを確認するようになったことで、デザインプロセスやデザイン思考についての理解が深まりました。これにより、マーケターとデザイナーの協力関係がさらに強化され、プロジェクト全体の質が向上しました。

この取り組みを通じて、私は改めてデザインにおけるコミュニケーションの重要性を認識しました。優れたデザインは、単に見た目が美しいだけでなく、その背後にある戦略や思考プロセスが明確に伝わって初めて真価を発揮します。コンセプトシートは、そのための橋渡しの役割を果たしているのです。

今後も、このコンセプトシートを活用し、さらに改善を重ねていくことで、より効果的なデザインを提供していきたいと考えています。同時に、社内でのデザイン理解を促進し、デザインの輪をさらに広げていく予定です。

コンセプトシートの導入は、単なるツールの追加ではなく、デザインプロセス全体を見直し、改善する機会となりました。これは、デザインの価値を最大化し、クライアントと私たちの双方に利益をもたらす取り組みとなりました。

4. ナレッジ共有の仕組み作り

次に、デザインの輪を広げる取り組みの中で、効果的なナレッジ共有を行う必要性を感じていました。この課題に取り組む過程で、私は単なる情報の共有を超えた、組織全体の学習文化の醸成という大きな目標に向かって歩み始めることになりました。

当初、各メンバーが発表するナレッジを、他のメンバーが自分事として捉えられない場面が多々ありました。率直に言えば、ある個人が共有するナレッジが、その場で即座に他のメンバーに活用できるケースは少なかったのです。

しかし、ここで重要な気づきがありました。共有されたナレッジは、その瞬間には直接役立たなくても、後になって必要になる場面が驚くほど多いのです。例えば、あるプロジェクトで直面した課題の解決策が、数ヶ月後の全く異なるプロジェクトで活きてくることがあります。また、デザインのトレンドや新しいツールの使い方など、一見すぐには必要なさそうな情報が、予想外の場面で重要な役割を果たすこともあります。

問題は、そのような場面に遭遇したときには、以前共有されたナレッジの詳細を忘れてしまっていることでした。これは非常に勿体ない状況でした。貴重な知識や経験が、時間の経過とともに風化し、組織の財産として活用されないのです。

この課題を解決するために、私はNotionを活用したナレッジ共有の仕組みを構築しました。この取り組みの核心は、共有されたナレッジを一過性のものではなく、組織の永続的な資産として捉え直すことでした。

Notionを使ったナレッジベースの構築により、以下のような変化が生まれました:

  1. 知識の蓄積と再利用:共有されたナレッジは全てNotionに記録され、後からいつでも誰もがアクセスできるようになりました。これにより、数ヶ月前、あるいは数年前に共有された知識でも、必要な時に簡単に取り出せるようになりました。

  2. 新入社員のオンボーディング強化:過去に共有されたすべてのナレッジは、新入社員にも共有されるようになりました。これにより、新入社員は組織の集合知にすぐにアクセスでき、より速やかに戦力として活躍できるようになりました。

  3. 部署を越えた学習の促進:デザイナーだけでなく、マーケターや他の部署のメンバーも、デザインに関する知識に簡単にアクセスできるようになりました。これにより、部署を越えた理解と協力が促進されました。

  4. 継続的な学習文化の醸成:ナレッジの共有と活用が日常的に行われるようになり、組織全体が学習し続ける文化が形成されていきました。

  5. 問題解決の効率化:過去の事例や解決策が蓄積されることで、新たな課題に直面した際にも、より迅速かつ効果的に対応できるようになりました。

この取り組みを通じて、私たちは「知識は共有されることで価値が増す」ということを身をもって体験しました。一人のメンバーの経験や学びが、組織全体の財産となり、さらには新たなイノベーションの種となっていくのです。

ナレッジ共有の仕組み作りは、単なる情報管理の改善ではありません。それは、組織全体がともに学び、成長していくための基盤づくりなのです。この取り組みを通じて、私はデザインの輪を広げるだけでなく、組織全体の創造性と問題解決能力を高める新たな段階に踏み出しました。

5. 全体MTGでの発表と共有

次に、力を入れたのが全体ミーティング(全体MTG)での発表と共有です。この取り組みは、デザインチームの活動を組織全体に浸透させ、デザインへの理解と興味を喚起する重要な機会となりました。

弊社では月に一回、全社員が参加する全体MTGを実施しています。従来、このミーティングの内容は主に数字の報告が中心でした。しかし、私たちはこの場をデザインの価値を伝える絶好の機会として捉え直すことにしました。

この取り組みの背景には、弊社特有の課題がありました。弊社は社員の入れ替わりが比較的多い組織です。特に新入社員にとって、数字だけの報告では、他の事業部や他のポジションの人々がどのような仕事をしているのかイメージしづらい状況でした。これは、組織の一体感や部署間の協力を阻害する要因になりかねません。

そこで私は、上長にお願いして、全体MTGの中でデザインに関する報告をする時間を設けてもらいました。この時間を通じて、私は以下のような内容を共有しています:

  1. 最新の制作デザインの発表

  2. デザインチームの取り組みや挑戦の紹介

  3. デザイントレンドや新しい技術に関する情報共有

  4. デザインが事業にもたらす価値の具体例

この取り組みの主な目的は、事業部外のノンデザイナーにも広くデザインに興味を持ってもらうことです。「どんなことをやっている人たちなのかわからない」という状況では、部署間のコミュニケーションも難しくなります。しかし、「面白いことをやっている人たちだな」と思ってもらえれば、それがコミュニケーションのきっかけになるのです。

実際、この取り組みを通じて、以下のような効果が現れ始めました:

  1. デザインチームの可視化:他部署の社員がデザインチームの活動を具体的に理解できるようになりました。

  2. 対話の促進:デザインの発表をきっかけに、他部署の社員からの質問や意見が増え、部署を超えた対話が活性化しました。

  3. 新入社員の理解促進:新入社員が早い段階でデザインの重要性を認識し、デザインチームとの協働の可能性を見出せるようになりました。

  4. デザイン思考の浸透:デザインの事例紹介を通じて、問題解決におけるデザイン思考の有効性が組織全体に浸透し始めました。

  5. モチベーションの向上:デザインチームのメンバーにとって、自分たちの仕事が全社的に認知され評価される機会となり、モチベーション向上につながりました。

この取り組みは、単なる情報共有の場を超えて、組織文化を変革する力を持っています。デザインを「見えない何か」から「身近で価値あるもの」へと変える過程で、私たちは組織全体のコミュニケーションと協働の在り方を少しずつ変えていっているのです。

全体MTGでの発表と共有は、デザインの輪を広げるための重要な一歩です。この取り組みを通じて、私たちは単にデザインの価値を伝えるだけでなく、組織全体の創造性と協働精神を育む土壌を作り出しているのです。デザインは、デザイナーだけのものではありません。それは、組織全体で共有し、活用する力強いツールとなっているのです。

まとめと次回予告

第2回では、デザインの意図を明確に伝えるコンセプトシート、組織の知識を蓄積・共有するナレッジベース、そして全社的なデザイン理解を促進する全体MTGでの発表について解説しました。これらの取り組みにより、デザインの価値がより広く認識され、組織全体のコミュニケーションが活性化されました。

次回の最終回では、デザイナーと他部門との交流促進や、意思決定プロセスの透明化など、より深いレベルでのデザインの輪の広げ方について詳しく紹介します。

いいなと思ったら応援しよう!