某ブランドの日本ショップで酷似したデザインのケーキが販売された件について
今更になってしまいましたが、某ブランドの日本ショップで酷似したデザインのケーキが販売された件についてです。
昨年12月にtwitterでこのことを発信し、かなりの反響をいただきました。
「落ち着いたら、なぜtwitterで発信したのか書きます」といっていたのですが、
思いが強すぎて、文章にしようとするたびに思い出し涙が出てきて中断していた
ちょうど事件があった12~6月はとにかく記憶がないほど目が回るほどの忙しさで、そのあとは仕事と育児のバランスを取ることに目を向けてしまっていた(私の今年の課題でした、、)
と理由で今になってしまいました。。
いっそのこともう触れない方がいいのでは、、とも思いましたが、
「落ち着いたら、なぜtwitterで発信したのか書きます」とお伝えしていたのが守れていないという気持ちがずっとあり、
拙い文章ではありますがここに綴らせていただきます。
発覚した経緯
レッスンの生徒さんが「先生のケーキに配色も配置も嘘みたいにそっくりすぎるケーキが販売されてます」と教えてくれたのがきっかけです。
初めて見た時は、「夢?そんなことある?」というのが率直な感想です。
オンラインショップで画像を見たときは、本当に夢かと思いました。笑
私の心情
怒りはなく、ひたすら「悲しい」という感情で心が埋めつくされてました。
twitterにも書きましたが、ケーキでもクッキーでも、一つ一つ自分なりにかなり時間をかけて考えたもので愛着もあります。
まず、このケーキは私が行っているフラワーケーキマスタークラスというレッスンのサンプルとして制作したケーキでした。
このフラワーケーキの配色やデザインは、
生徒さんが個性を出しつつ素敵なフラワーケーキを作ること
生徒さんがそれぞれの色で作ってみたいという想像力を働かすことができること
上記2点を踏まえつつ、みなさんにお花絞りスキルをしっかり習得してもらえるようになること
この目的を考えながら作ったものです。
時間やカリキュラムの流れも考えつつ、全てを両立しながらサンプルを作るのって結構労力がいるもので、頭が痛くなるくらい悩んで生み出したものでした。
そして、サンプルとはいっても、生徒さんには参考にしていただく程度でご自身の好きな色やベストだと思う配置を考えながら作ってもらってます。
正直、同じ色で作ってもらったり、形もサイズも配置もきっちり固定して決めてその通りにやってもらった方が、レッスンを行う側としてはとっても楽です。準備もよっぽど楽になります。
けれど、みなさんそれぞれ好きな色が違ったり、自分では気づいてないセンスをお持ちだったりするんです。私はそこをとても大切に思ってました。
(もちろん楽しんでもらうのが一番なので、迷って苦痛になるようだったらサンプルを見本にして同じようにしてもらってます。楽しいのが一番です!)
みなさんの少しの工夫や創意って、それだけで唯一無二。
少しの変化でグッと個性がでます。素敵なものだと思います。
私は2017年にレッスンを始めてからずっと変わらず、
レッスンサンプルを作るときは、
『みなさんが楽しめる枠組みを決めて、自由さを残しておく』
ということを念頭に置いてます。
2017年から今まで、その思いを変えずにレッスンを開催し続けてます。
今回のことは、そういった全ての思いや背景を無下にされたように感じたため、とめどなく涙が出てきました。
今までみなさんが作られたフラワーケーキ
私が思いを込めてそれぞれの作品ができるようお手伝いしてきたみなさんのフラワーケーキが走馬灯のように脳裏に広がって、さらに泣きました。
ちなみにもう一つの模倣されたケーキは、私が運営に携わっているFlower Picnic Cafeのお店のスタッフがレッスンに来てくれて作ったものです。
今は退職しているオープニングスタッフですが、人生初めての飛行機で北海道から東京にきて、緊張もしていたなか「カフェのイメージで作りました」と言いながら可愛い色合いで作り上げてくれた思い出のあるケーキです。
Twitterでこのことを発信した理由
理由は2点ありました。
1、これが許される世の中なら、もう物作りの仕事をしたくない
2、全てのクリエイターのためにも、これが許される世の中であってはいけない
と言う思いから発信しました。
2番目の理由は、なんだか言葉にするととても偉そうですが、、
あえてフラワーケーキデザイナーとかレッスン講師ではなく
「全てのクリエイター」
と表現したのにも理由があります。
今の時代はネットで様々な人の作品を見ることができて、
イラストでも、
お菓子でも、
アクセサリーでも、
たくさんの素敵な創作物に触れることができます。
私自身も創作する楽しさも苦悩も実感しているため、
どのジャンルであっても、創作する人の考えや思い・背景があるのだろうと、創作すればするほど想像するようになりました。
尊敬もしています。
創作するって、思いと熱量がいることだと思います。
もし、素敵だなと思ったものをそのままそっくり真似して
ましてや利益を得るなんて(利益を得ていなくてもですが)
それが罷り通るのが常識になったら、クリエイターは思いや熱量を持って創作したいと思うでしょうか。
そんなことが常識であれば、全てのクリエイターに失礼すぎると本気で思い、発信を決めました。
発信した後の反響
想像以上に応援していただきました。
バズっていて携帯の通知が鳴り続け、長時間のレッスン中だったのでレッスンが終わってから開いたのですが、正直開くのは怖かったです。
「気にしすぎ」「結局どうしたいの?」等、誹謗中傷がくるだろうと想像してたのですが、twitterを開いたら応援や暖かいメッセージばかりでまた涙が出てきました。
様々な方が先方にも連絡を入れてくれたようで、
生徒さんも知らない方も私以上に怒ってくださったり、親身になってくださって、この時の涙は悲しみじゃなくてみなさんの優しさに触れた感動の涙でした。
twitterをきっかけに、テレビ等に取材もしていただいて、事の大きさに先方が気づいてくださいました。
先方の初期対応は私の心を更に悲しくさせる発言でしたし、全く悪気がない様子でしたので、SNSがなかったら、メディアがなかったら、ただ泣いてただけかもしれません。
「何か対策ができなかったのか?」というご意見に対して
意匠法という法律に基づいて、意匠登録の申請はできます。
ただ、意匠登録には所定の料金(出願料16,000円 審査を通過したら毎年8,500円〜16,900円)が必要になります。
また、弁理士に意匠登録の申請を頼むとすれば上記の金額以外にも費用がかかります。成功報酬を含めた相場として、10万〜20万程度はかかります。
このことを踏まえると、フラワーケーキを作る人に限らず、クリエイターが新しいものを作る度・色や形を変える度に意匠登録の申請するというのは現実的ではないと思っています。
自分の作品を作れば作るほど、赤字になります。
そしてそもそも、お金をかけて意匠登録の申請をしても申請が必ずしも通るとも限りません。
どのジャンルであってもクリエイターの作品を守る=道徳や倫理観というものに頼らざるを得ない部分もあると私は思っています。
創作性が認められれば著作権として主張できるというご意見もございましたが、ケーキのデザインの主張は簡単ではないことですし、弁護士を介入させて争うというのは時間もお金もかかります。
色々考えた結果、twitterという手段で発信をしました。
先方とのやりとりについて
2回、直接東京に来て謝罪をしてもらいました。
・指摘されるまで不祥事に気づかなかったお詫び
・深く反省し、フラワーケーキを取り扱うこと自体を取り止め、事業としての体制見直しを行う
というお話がありました。
謝罪文も出していただき、販売も取りやめてもらい、和解しております。
みなさまへの御礼
twitterでもお礼を何度か伝えておりますが、改めてお伝えします。
本当にありがとうございました。
大変多くの方にリツイートしていただき、私のもやもやした気持ちを代弁してくださっている方もたくさんいらっしゃって、心が救われました。
また、先方から誠実に対応していただけたのはみなさんのお力のおかげだと思っています。
心から御礼を申し上げます。
また、この1年も、私は生徒さんからたくさんの心に残る嬉しい言葉をいただきました。
私は自分の欲のためには頑張れないタイプなので、いつも生徒さんが楽しんでくださる気持ちや暖かい言葉が原動力になってます。
ありがとうございます。
また新しいものを考えようという気持ちにもなれました。
色々ありましたが、これからもみなさんに「楽しい」「可愛い」をお届けできるよう、心を込めて頑張ります。
追伸
先方の会社のお花絞りした方といつか一緒にお花絞りをしてみたいです。
自分の気持ちも楽しく消化できそうな気がします。笑
叶わぬことだと思いますが、いつかお会いできますように。