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【書評】「藪の中」、何が起こったのか


芥川龍之介が1922年に『今昔物語集』に着想を得て上梓した、短編『藪の中』ー


平安時代のとある藪の中で起こった、殺人と強姦事件
殺された男は強姦された女の夫ー侍であり、強姦された美しい女は殺された侍の妻


この短い物語は、検非違使に尋問された証人たちの証言、続いて当事者の告白で乱反射のように複雑に構成されていて、未だ真犯人は不明のまま、芥川作品の中でもその追求に膨大な数の論文が出されー

当事者のひとり多襄丸が罪を洗いざらい告白するが、他の証言とは矛盾ばかり

侍は自殺だったのか
美しい妻は本当に強姦されたのか

藪の中では、本当は何が起こったのかー


おそらくはひとつの事実に対して、素性や感性、異なる考え方を持つ者の証言を一点に集めると、個人のエゴだけが化石のように残るという古代からの反問のミステリー

すでに著作権は切れ、青空文庫で無料で楽しめるので、是非↓

芥川龍之介 藪の中 (aozora.gr.jp)


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