「書くインタビュー」4 佐藤正午 (佐藤正午さん、ファンならではのネタをわたしに語らせてください)
まったくもってふざけた装丁だと思います。
あの「直木賞の賞状?」がそのまま表紙になってるのだから。
しかも!
表彰式に行かれてこの賞状をいただいたというのならまだしも、ご本人は会場に行かず編集者の坂本氏に出向かせたのに。実際に受賞の挨拶を代読したのは坂本さんなのに!
そうですか、なのに、表紙にするわけですか? いえ、作品は素晴らしいし、大好きだし「日本を代表する7人の佐藤正午ストーカー」を選ぶなら、絶対に選出される自信ありまくりの私ですが。
いやはや、この表紙には唸りました。
どこまで遊び心満載?
よかったの? この表紙で? まじで?
「書くインタビュー」は小学館のきららに毎月連載されている、インタビュアーと佐藤正午氏との「往復書簡」の体をなした「メール形式」のインタビューです。(もちろん現在も進行中です。今は小学館の小説丸の中にあるwebきららから読めます)
最初の担当の女性はたしか恐れをなして逃げたような記憶があります。2代目が東根ユミさん。彼女は果敢で、どんな意地悪な返答があっても続けてくださっていました。
とちゅうで佐藤正午氏が小説執筆のため休載の時期もありました。
そして2017年1月。「月の満ち欠け」の刊行が発表されたあたりから、この第4巻が始まります。
この4巻。読み返してみても、本当にコンテンツ満載。
*月の満ち欠けの誕生秘話
*某作家を「とんだたぬき」と呼び、彼の悪事をあばくというカタチからの、某作家との「白熱のメールのやりとり」
*東根ユミさん、懐妊。双子の出産に向けての産休、育休。
*「鳩の撃退法」の編集者大木氏が新しいインタビューの担当となる。
もう、何度読み返してもおもしろい。
中でも、大昔の佐藤正午掲示板で「どんぐりせんせい」と呼ばれていた「盛田隆二先生」との白熱のやりとりは必読です。
そう、あのロングセラー「夜の果てまで」の作者であり早稲田大学文学学術院客員教授もされていた盛田隆二先生です。個人的には佐藤正午の超難解作品「ダンスホール」のネットでの解説を掲示板に書いていただいたのが格別の思い出。それくらい佐藤正午先生のファンでもあられる盛田隆二先生とのメールの応酬!
「人の個人的な手紙を、あとがきに掲載するなんて、とんだたぬきだ!」から「手紙に書かれていることと、依頼したあとがきに書かれていることが事実と違っているじゃないか!」的なことまで、お互いの言い分を、丁寧におもしろおかしく応酬するのだけど、いや、これって文学手法としてすごいことがたくさん書かれていないか? ってことがだんだん明らかになっていきます。
いやはやこれは貴重です。事実からフィクションを作り上げる手法の二人の相違点がはっきりとわかります。
もともと「佐藤正午氏が自分の小説の手の内を語る」なんて、これまでもなかったし、これからもきっとないでしょう。もしかしたら、ここだけで読めるものかもしれません。前にもあとにもありません。
ぜったいきっと、ここだけの特典です。
1〜3巻を読んでなくても4巻はおもしろいです、マジ。と言いたい作品です。