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「ペッパーズゴースト」伊坂幸太郎作は、ゴーストだらけ?
公式サイトもあります。
* ペッパーズ・ゴースト(英語:Pepper's ghost)は、劇場などで使用される視覚トリックである。板ガラスと特殊な照明技術により、実像と板ガラスに写った「幽霊」を重ねて見せることで、効果を発揮する(ウィキペディアより)。
伊坂幸太郎の作家生活20周年記念作品とのこと。おもしろくないわけがありません。キャラの濃いネコジゴハンターの二人組や成美彪子(なるみひょうこ)に引っ張られながら、ぐいぐいと物語を楽しんでいきました。
それでもわたしには、このストリー全体が「実像でないペッパーズゴースト」で、本当のストリーが見えないところで動いているように思えてしかたありませんでした。
それで3回読んで、自分で想像して組み立てた部分もあったけれど、最後まで疑問に思っていることもあって。
裏で動いている物語は、案外読者ひとりひとりの頭の中だけのお楽しみ!なのかもしれません。
あらすじ
中学校の先生をしている檀千郷(だんちさと)には「他人の飛沫で」未来のハイライトシーンを見る能力があります。
その能力で、生徒の里美大地と祖母が「事故にあう可能性」を伝え、事なきを得る。
それに疑問を持ったのは、大地の父親である里美八賢(さとみはっけん)でした。
内閣府に勤める里美八賢は、檀千里をテロ犯人と疑う反面、その能力にも頼ります。
彼が関わっている「サロン」(カフェダイヤモンド事件の被害者の会)は、テロリストに犠牲になった家族を持つ会で、お互いを慰め合う反面「復讐の方向」へ向かう者もいるちょっと複雑な団体。そうしてここから事件があらたなテロ事件がはじまります。
同時進行で登場するネコジゴハンターの「アメショー」と「ロシアンブルー」の二人のコンビがまた、素敵なキャラクターです。
この二人はyoutubeでネコを虐待した者やそれを煽った者を成敗するコンビ。
いきなり小説の中から飛び出した二人組!ですが、この伏線にも唸りました。そしてもちろん、この二人組も物語りに深く絡んできます。
こうして書いてみると、登場人物も多いですね!
本当にいろんなことが起こるのですが、そこは伊坂幸太郎の筆致で軽やかなテンポで、楽しく読める作品であります。
ネタバレだけど書きたいこと
ネタバレだけど、書きたいことを書きます。
そもそも里美八賢がカフェ・ダイヤモンド事件の遺族の会にいたのは、偶然ではないと思います。
八賢は「恩師をこの事件でなくし」「たまたまかかりつけ医が事件の遺族夫婦であったこと」から、この会に関わることになります。
いや、偶然じゃないですよね? その後、美術館で一般人を巻き込んだテロ事件が起こり、警察関係の「ピラミッドのとっぺんあたりにいた人」がいきなり家族を失ってしまう。
彼はけしてこのことを公表せずに、テロの撲滅に尽力している。
この「名前の出てこない、とっぺんあたりの人」。
かなり裏で動いてますよね?
そしてネコジゴハンターの二人組は?
やはりこの「名前の出てこない、とっぺんあたりの人」と関わっているのかな?
どうなんでしょう?
この二人組を雇ったのは「偶然にも大金を手に入れた愛猫家」とのこと。
ここにはまったく繋がりはないんでしょうか?
ラストの見せ場「クリニック立てこもり事件」。
ここで本当に自爆テロが起きたのか? 本当は起きてないのか? これもまた謎といえば謎だと思います。
八賢と「名前の出てこない、とっぺんあたりの人」はここに関わっていいないのでしょうか?
いやはや。
頭の中の妄想物語が多すぎます。
いつか文庫化のおりには、少し書き足していただけると助かります。
そして、こんなところにあの人が!
成美彪子(なるみひょうこ)がサークルのメンバーの紹介をしているくだりで、意外な人物の名前をみつけました。
(以下引用)
*四人とは、そうです、野口さん、哲夫さん、沙央莉さん、それから将五さん、あの時飛び出していった四人です。野口さん意外はみんな苗字が同じで ー全国でもかなり多い苗字でしたから、驚くほどの偶然ではありませんがー だからわたしたちは下の名前で呼んでいました。
3人が同じ苗字なんですね。多い苗字といえば、鈴木さん、田中さん、佐藤さん。
佐藤さん? え! 佐藤将五さん!!!
佐藤正午ファンのわたしがこんな隠れキャラを見逃すわけがありません!!!
ああ、幸せでした。
わかりやすく楽しめる小説ももちろん好きですが、こんな謎だらけ小説も大好きです。
いつか、どなたかわたしと「いや、自分はこういうふうに思っているよ!」的なネタバレ戦を挑んでいただければ、幸せだろうなと思っています。