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大学受験地理の標準的な勉強法


はじめに

 大学受験で地理を選択する人は、他の科目と比べると少ない思います。その分あまり語られないことも多いであろう、大学受験地理の勉強法について今回は話していきます。

 地理の他に、英語現代文古文漢文数学世界史の標準的な勉強法についての記事もありますので、もしよければそちらも参考にしてください。


 毎回同じような説明をしていますが、改めて述べておきます。

 ここでは、広く受け入れられていそうな参考書や考え方を紹介していきますので、特に目新しいことないかもしれません。私が個人的におすすめする参考書や勉強法については、別の記事を書く予定です。また、「勉強法」とどう向き合うかについては『自分に合った勉強法や参考書を見つけるためのヒント』を参考にしてみてください。


 また、高校の先生の方針や予備校のカリキュラムをそれぞれが抱えていると思いますから、ここで示す流れの通りに進まなくとも気にしなくて構いません。それぞれに得意不得意もありますから、これから示す勉強の流れや参考書のすべてをやる必要はありません。


 まず、ここで紹介する勉強法は、高校入学から大学受験直前までの期間を想定しています。「このランクの大学を目指す人向け」といったレベルは設定していません。その分、大まかな流れを示すに留まっていますがご了承ください。

 地理は、他の社会科目と比べて暗記事項は少ないものの、その分入試では(共通テストでも国公立二次試験でも)思考力勝負の色が強く出る科目です。

 勉強の流れは、多くの場合シンプルで、「地理的理論の理解」「基礎知識の暗記」を徹底した上で、共通テストを受験する場合は「共通テスト演習」を行い、国公立二次試験の受験者は同時に「論述演習」をしていくことになります。

 なお、大雑把に国公立二次試験と呼んでいますが、大学によっては出題されないほか、逆に私大でも大学によっては論述問題も出題されるため、志望大学で論述問題が出るのかをしっかりと確認しましょう

 この「地理的理論の理解」「基礎知識の暗記」「共通テスト演習」「論述演習」の4つについて、それぞれ詳しい説明と参考書の紹介をしていきます。


各分野の勉強に使われる参考書と注意点

地理的理論の理解

 特に系統地理ですが、地理的な考え方を理解することは極めて重要です。他の科目以上に、(その理論の)論理を理解することが大切になってきます。

 とにかく、考え方・論理に意識を向けて勉強をしていくことが、共通テストや国公立二次試験を突破する鍵となります。勉強をしていく際には、地図帳や資料集も積極的に用いながらイメージを豊かにしていきましょう

 これからまず講義系参考書を紹介していきます。これは、何度も何度も読み返して復習をしていきましょう。たった一冊でも、その完成度を限りなく100に近付けていくことが重要です。

 ある程度完成させて問題演習に移ったあとも、定期的に復習することをおすすめします


 最も名高い参考書は、瀬川聡(2024)『改訂第2版 大学入学共通テスト 地理総合、地理探究の点数が面白いほどとれる本』(KADOKAWA)でしょう。系統地理から地誌分野まで、一冊にまとまっていて、国公立二次試験を視野に入れたとしても、基本知識としてはこれで十分なほどです。

 紹介するのはこれだけで十分かもしれませんが、まだ発売されていないもので、注目しているものがあります。宇野仙(2024)『きめる!共通テスト 地理総合+地理探究』(Gakken)です。

 宇野先生は、受験地理の良質な参考書をいくつも書いていて評価の高い先生です。この記事内においても、何冊も紹介しています。

 ただ、講義系参考書についてはまだ一冊も執筆していなかったので、『きめる!共通テスト 地理総合+地理探究』が初の講義系参考書となるのです(旧課程の『きめる!共通テスト 地理』の著者は別の先生でした)。


 地理を学ぶにあたって、講義系参考書だけでなく、地図帳を積極的に使っていきましょう。よく言われることなので聞き飽きているかもしれません。そうであれば逆にこう言ってみましょう、「地理を勉強すると地図帳を見るのが圧倒的に楽しくなるよ!」と。

 「地名を名前だけ覚えても意味がないから、場所も含めて暗記しよう」と言えば、それはその通りですし、たしかに場所も確認するべきです。ただ、地図帳は何も場所を確認するだけのものではありません。

 地理の勉強をしていくと、大地形の話でも大都市の分布でもいろいろなことを知るわけです。それを、地図帳を見て「本当にそうなってる!」「これも当てはまるんじゃないか!」といったように実感するのはとても楽しいことではないかと思います。ぜひ地図帳を使ってみましょう。

 学校で採用している地図帳を使えば十分ですが、帝国書院編集部(2023)『新詳高等地図』(帝国書院)を紹介しておきます。


 地図帳に加えて、資料集も使っていけるとなお良いでしょう

 資料集は、それを読むというよりは、分からないことがあったときに調べたり、写真や図を見てイメージを豊かにするために使われることが多いです。

 いくつかありますが、学校で採用しているものを使えばよいと思います。ここでは、市販されているものとして、帝国書院編集部(2024)『新詳地理資料 COMPLETE 2024』(帝国書院)を紹介しておきます。

 同じ帝国書院から『図説地理資料 世界の諸地域NOW 2024』も出ていますが、こちらの方が少し易しめかもしれません。

 また、統計資料を調べられるように、二宮書店編集部(2023)『データブック オブ・ザ・ワールド 2024 (vol.36)』(二宮書店)を持っておいてもよいでしょう。


基礎知識の暗記

 地理的な考え方を理解したら、さらに用語などの暗記も行っていきましょう。地理用語はもちろんですが、地名なども重要です。

 用語を覚えておくことが、世界史と同様、キーワードを起点に知識を整理することに繋がって、理解を深めることになるのです。

 「地理的理論の理解」で紹介した参考書を何度も反復したりすれば、基礎知識も自然と身についていくでしょう。その意味では、新しく参考書に入る必要はありません。

 そうは言っても、暗記用に特化した参考書は重要事項がまとまっているのは間違いないので、一冊だけ紹介しておきます。宇野仙(2024)『共通テスト 地理 集中講義[地理総合、地理探究] 改訂版』(旺文社)です。

 コンパクトにまとまってはいますが、暗記に特化していて、講義系参考書ほど面白くはないかもしれません。暗記すべきことは暗記してしっかり定着して、次に進みましょう。


共通テスト演習

 他の科目の「標準的な勉強法」では、「共通テスト演習」と題する分野は作っていませんでした。

 英語や世界史は勉強を重ねていればあとは慣れることで点数は取れるようになるし、形式が特殊で演習を積んでいくことが多い国語などであっても、共通テストの過去問や問題集を解くだけに留まります。

 共通テストの演習も復習としての機会にはなったりするものの、能力を高めるための機会として大きな地位を占めてはいないのです。

 一方、地理においては、共通テストでのみ使う人はもちろんのこと、国公立二次試験で地理を使う人であっても、共通テストの演習は重要になってきます。共通テストの演習が地理の能力を高めるのに貢献してくれるためです。


 共通テスト地理の問題は良問が多く、知識を有しているだけでは解けず、その場で論理的に思考を重ねていくことを要求してきます。演習を通してその訓練をしていくことは、二次試験にも活きてきます。

 共通テストで地理を使うのみの場合は、ここで終わりです。国公立二次試験でも地理を使う場合には、次の「論述問題演習」に移ります。二次試験がメインの人も、「たかが共通テスト」と思わず、丁寧に問題演習を重ねていきましょう。


 基本的には、共通テストの過去問と問題集、そしてセンター試験の問題を解いていけばよいです(センター試験の過去問を使うのもアリです)。ある程度演習を重ねたうえで、難易度の高い問題だけをもう一度復習するのに向いている参考書があるので、それを薦めておきます。

 宇野仙(2022)『共通テスト 受験生の50%以下しか解けない「差がつく」問題と解き方 地理』(旺文社)です。一気に全範囲の難問を復習できます。


論述問題演習

 志望大学の入試で論述が出題される場合は、地理的理論の理解と基礎知識の暗記が進んだら、共通テスト演習を挟みつつ、論述問題演習を進めていくことになります

 論述問題のある地理の試験を受験する人が少ないためか、地理の論述問題集は、そもそもほとんど出版されていません。その中でも非常に評価の高い参考書として、宇野仙(2010)『大学入試 地理B論述問題が面白いほど解ける本』(KADOKAWA)があります。

 しかし、(去年まではたしか売っていたのですが)絶版になってしまったようで、今では新品で手に入れるのが難しそうです。それでも、代わりとなる参考書がないため、中古で手に入れられるのであれば、ぜひ購入したいものです

 論述に特化した地理の問題集で他に紹介できるものがあるとしたら、坂本勉・佐藤裕治・仁科淳司・伊藤彰芳・中野泰男(2009)『納得できる地理論述』(河合出版)でしょうか。

 タイトルにある通り「納得できる」説明も多いのですが、論述問題演習に入ったばっかりの受験生には少し難易度が高めかも知れません。また、筑波大学や一橋大学の少し特殊な問題も多くあり、東大や名古屋大の志望者には向かないようにも思います。


 『大学入試 地理B論述問題が面白いほど解ける本』を使えたとしても、そうでなかったとしても、国公立二次試験の論述対策としては、参考書で十分な演習を積むことは難しくなってきます

 そこで、基本的な方針としては、志望大学の過去問や、冠模試(大学ごとの出題形式に特化した模試で〇〇オープンなど)の過去問を使って積極的に演習を行っていくことになります

 東大志望者の場合は、年代雅夫(2024)『東大の地理25カ年 [第9版]』(教学社)を解いていくことをおすすめします。一般に、「科目別25カ年」の過去問題集を解くのは時間に余裕のある上位層だけとなってしまうことが多いですが、地理については問題集も少ないですからやってみてもよいはずです。他に、冠模試の過去問を解くのもよいでしょう。

 しかし、大学によっては、過去問が数年分しか入らなかったり、冠模試の過去問が販売されていなかったりします。そうした場合で、さらに演習を積みたいときには、東大志望者でなくとも『東大の地理25カ年 [第9版]』を解くのがよいかもしれません。スタンダードな問題が多いため、地理の力を高めるのに適しています。


おわりに

 地理は、社会科目の中でも世界史・日本史とは異なり、暗記事項が少なく思考力勝負であったり参考書が少ないなど、少し特殊な位置を占めています。

 その結果として、独学で勉強を進めるのが難しく、地理を選択するのは首都圏の進学校の生徒の大半になるという事態が起きてしまっています。

 しかしその中であっても、良質な参考書というのはいくつも出版されていて、それを上手く発見して利用できれば、十分に勉強を進めていくこともできるのです。頑張っていきましょう!

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