【なまらのんびり06】暗闇を求めて。【夫婦エッセイ】
冬でも気軽に家庭菜園を楽しむために「かいわれ大根を育てよう」と決めた夫婦。
3月に入り北海道民御用達のホームセンター「ホーマック」へと向かうと、植物の種も売られ始めていました。僕らは無事かいわれ大根の種を手に入れることができました。
ここでかいわれ大根の育て方を簡単にご紹介。
プラスチックの使い捨てコップなどの容器に、キッチンペーパーを敷き、水で浸し、種を蒔きます。乾かないように霧吹きで水をあげたり、ある程度根付いてからは毎日水を変えるようにします。
そして大事なことが一つ。それは光を当てないようにすること。光を当てるとそこで成長が止まってしまいます。種を蒔いてから1週間程度経ち適度な大きさに育ったら、1日程度陽の光に当て葉を緑色にして、収穫です。
早速かいわれ大根を育て始めて数日。妻が相談してきました。
「ちょっとだけ葉が緑色になってきちゃった。もしかしたら光が当たっているのかも」
光を当てないために、我が家では手頃な段ボール箱を被せていました。しかし、段ボールが薄くて光が透けてきているのではないか、と妻は言うのです。これでは十分な長さまでかいわれ大根が成長しない可能性があります。
「何か光を遮るのに丁度いいものを探さなきゃ」
僕らは買い物に行くことにしました。
僕らが向かったのは百円均一。
様々な商品が僕らを出迎えます。
当たり前ですが「かいわれ大根に光を当てないための覆い」なんてグッズは売っていません。なので、本来の使用目的は無視して、かいわれ大根に光を当てないために使うことを想定しながら、商品を見ていきます。
「この箱を新しく買うのはどうだろう」
僕が組み立て式の収納ケースを提案します。
「うーん……うちで使っている段ボール箱と同じようなもんじゃない?」
妻は自分が育てているかいわれ大根のために慎重です。
「今使っている箱に黒い画用紙を貼ったらどうだ」
「いやいや、それならアルミで覆った方が光を通さないんじゃない?」
商品を物色しながら徐々に議論は白熱していきます。
この商品はどうだ、どうにか利用できないものか、と考えながら更に店内を巡ります。
「うーん……お、このゴミ箱はどうだろう……」
「あ、あっちのアルミのランチバッグもいいかも……」
いくつか良さそうなものが見つかり、さて、と二人は考えます。
どうだろう。
本当に光を通さないのだろうか。
かいわれ大根のために、慎重に買い物をしたい。
そのためには、確かめるしかありません。
しかし、どうやって?
そして、僕らは、逆さにしたゴミ箱やランチバッグを頭から被るようにして覗き込み、照明が透けてこないか確かめたのです。
売り物に顔を突っ込むように品定めしだした僕らを傍から見ていた人は「この人達一体何しているの……?」「これがプロの見極め方なのかしら……」「ヒャッキンの商品に一体何を期待しているの……?」と不審に思ったことでしょう。もしかしたらもうちょっと長く続けていたら店員から「お客様……?」と声をかけられたかもしれません。
その後僕らは黒いバケツに目を付け、入念に覗き込み、それを購入することに決めました。光が透けることなく、大きさも丁度良かったのです。
我が家では今でも黒いバケツが部屋の隅に逆さに置かれており、かいわれ大根の成長を優しく守ってくれています。
ちょっと変な光景です。
ちなみに。
買い物から帰ったあと、ふと今まで使っていた段ボール箱が目に入り、試しに段ボール箱を頭から被って覗き込んでみました。
すると、案外光は透けてきませんでした。恐らく隅にある隙間を塞げば問題なく使えたと思います。
あの恥ずかしい買い物は無駄だったのかもしれません……。
・商品に「顔を突っ込むように」という表現を使用しましたが、購入前の商品は汚したり破損させることがないように配慮しています(^^)
・本来の使用目的を外れて商品を使用する場合は、十分に安全に配慮して自己責任で使用しましょう(^^)
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