「努力は必ず報われる」って、本当?
水泳の池江選手の復活とご活躍は、日本中に勇気を感動を与えたけれど…その一方で「努力は必ず報われる」という言葉が一人歩きして、特に病気に苦しむ方は複雑な思いを持っているように感じています。
私は池江選手と同じ時期に入院していました。
彼女が一時退院してディズニーランドへ行ったニュースを見た時、「ここまで回復されたんだ!!」と驚き、励みになった反面、「私はなんでまだ診断もつかず、寝たきりなんだろう…」入院中のベッドで呆然としたのを覚えています。
私は「よく効く」と言われた治療の効果も出ず、その頃「本を読んだり、歩いたりもできなくなるでしょう。いずれ、人工呼吸器が必要になると思います」と主治医に宣告されました。
周りからは「病気に負けないで!闘って!がんばって!」と言われ、「一体、これ以上何をがんばれというのだろう?何とどう闘えというのだろう?」「こっちは生きてるだけで精一杯なんだよ!」と心の中で毒づいたり。
「がんばらなくていいよ!毎日生きてくれているだけで、本当にすごいよ!ありがとうね!」誰かそう言ってくれないかなぁ…そんな風に思いながら、毎晩、枕を涙で濡らしていたのを思い出しました。
池江選手の「努力~」発言は、ご自身に向けて言ったものと思います。
英語学習をがんばっている人が「毎日勉強していたら、英検でも手ごたえを感じて合格できました!がんばった甲斐がありました!」みたいな…。
別に、合格しなかった人に「あなたは努力が足りなかったんだよ。だから報われなかったんだよ」と言っているわけではない。試験に合格したり、代表に選ばれるということは、裏を返せば、不合格になる人や選ばれない人は絶対いるわけで。それは、その日のコンディションだったり、運もあるので、「努力」の一言では片付けられない。
病気を抱える人たちが、「努力」発言にモヤモヤしているのは、励ましのつもりで「池江選手みたいに頑張って!」「努力すれば必ず報われるんだよ!」「池江選手をお手本に…」と医師や周りに言われてしまうのはとても辛いから。
同じ病名でも、進行度、病状、年齢や体質、体力、受けられる治療など…それぞれ状況が違うし、強靭な体力と精神力を持つトップアスリートと同じ闘病・回復をたどれると思われても困ってしまう。
私が罹っている2つ目の難病は「数万人に一人」と言われていますが、たまに芸能人でも同じ病気に罹られた方をニュースで見かけます。亡くなる方もいるし、数か月で「寛解」となって復帰する方も。
そういった報道を見て、「〇〇さんは半年で復帰してたね!あなたも治るんでしょ???」「数か月で治る病気なんだね!」「頑張って〇〇さんみたいに復帰してね!」なんて言われたらたまらない。
そして、池江選手やこういう芸能人が、ご本人の意図しない所で同じ病気に悩む人達の「希望の星」と祭り上げられたり、逆に反感を買ってしまうのもとても気の毒に感じます。
それぞれの立場によって考えや感じ方も違うと思いますが、この騒動で胸を痛められている方に「がんばらなくていいよ!毎日生きているだけでも本当にすごいよ!ありがとうね!」とお伝えしたいです。
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☆…ちなみに、「本を読んだり、歩いたりもできなくなるでしょう。人工呼吸器も…」というのは、2年経った今も幸い起きていません。
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