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ミュージカル「SIX」来日版観劇感想

 こんにちは、雪乃です。今日は今年の観劇始め!ということでEX Theater Roppongiで「SIX」の来日版を観劇してきました。六本木、行く機会がなさすぎて今日行ってみたら全然分からなかった……。

 「SIX」はヘンリー8世の6人の「元」妃たちが現代によみがえってバンドを結成し、「誰が一番ヘンリーに悲惨な目に遭わされたか」を競ってバンドのリードボーカルを決めようとする、ライブ形式のミュージカルです。

 1人目の妃であるキャサリン・オブ・アラゴンは、ヘンリー8世が愛人(アン・ブーリン)と結婚するために離婚される。
 2人目の妃であるアン・ブーリンは後にイングランド女王となるエリザベスを生むも斬首。 3人目の妃であるジェーン・シーモアは、ヘンリー8世にとっては待望となる男子を産むも出産後に死去。
 4人目の妃であるアナ・オブ・クレーヴスは、肖像画と本人の顔が違うという理由で離婚。 5人目の妃であるキャサリン・ハワードは不義の疑いで斬首。
 6人目の妃であるキャサリン・パーはヘンリー8世の最期を看取り、最後の妻として生きのびる。

 ヘンリー8世の妃として数奇な運命を辿った6人が自分たちの人生を、思いを、音楽に乗せて打ち明ける「SIX」。史実をベースにしつつも現代のポップスシーンの要素が色濃く取り入れられたミュージカルナンバーから見えてくるのは、誰かの妻や母ではない、1人の人間としての彼女たちの姿。ヘンリー8世ありきの歴史から彼女たちの個人の生を掬い上げていく作品でした。
 歴史から救い出された個人の生に込められた、現代でも変わらない普遍的な人間の、女性の苦悩。そういったものがライブの中に巧みに織り込まれており、歴史モノでありながらライブ、かつ共感もできるという、とにかく盛りだくさんなミュージカルで楽しみつつもなんだか泣いてしまいました。

 以前から音源はよく聞いており、3年前の記事で音源のみの感想は書いていましたが、2025年、待望の日本上陸。3年前の私、聞いてるか!日本でやって欲しいって書いてたミュージカルが本当に日本で上演されるぞ!!良かったな!!!信じて待った甲斐があったな!!!

 ちなみに当時の記事がこちら。

 ライブ形式ということで観客とのやり取りも多く、バンドメンバーの紹介もあり、観客側も歓声や手拍子で思い切り盛り上げる、最高にテンションが上がる作品。上演時間はわずか80分、休憩なしかつ80分のうちほとんどが音楽で占められているため、体感は6秒でした。

 先月観た舞台が本編だけで3時間ある「天保十二年のシェイクスピア」だったこともあってか上演時間は短く感じましたが内容はしっかり濃く、かつイングランド史の知識が無くとも歌詞を追っていけば自然と6人の王妃たちの生き様が見えてくる設計になっていて安心しました。王妃たちのキャラクターに現代のポップスターのイメージが投影されていることもあってか、楽曲は現代的でキャッチー。プログラムには、制作上でどの王妃にどの歌手をモチーフにしたかが書かれています。
 会場が一体となって盛り上げる曲もあればしっとりと聞かせる曲もあり、なおかつキャスト陣は全員とんでもなく歌が上手いので、出演者が6人しかいないのが信じられないほど聞きごたえがありました。会場もライブハウスとして使われている劇場だったので、この作品にぴったり。ソウルフルな歌声と生バンドを堪能しました。
 今まで音源でしたか聞いたことがなかった楽曲を改めて生で聞いてきましたが、やっぱりその場で日本語字幕が出るって良いですね!今まで歌詞をなんとなくでしか知らなかったので、「あ、この曲って本当はこういう意味だったんだ」と気づくことの多い公演でした。
 キャサリン・ハワードが歌う「All You Wanna Do」は曲が進むごとに同じ歌詞が違った意味に聞こえてくる楽曲で、次第にキャサリン・ハワードが抱える苦しみが見えてくるところは非常にミュージカルらしかったです。
 どの曲も良かったですが、ジェーン・シーモアの歌う「Heart of Stone」のロングトーンは圧巻でした。ポップス色の強い本作のナンバーの中では比較的ミュージカル色が強くめちゃめちゃ好みの曲だったので、たぶん私はそのうち家で歌っていると思います。
 アナ・オブ・クレーヴスが中心となって歌う「Haus of Holbein」は、王妃に選ばれなかった女性の肖像画は左に、王妃に選ばれたアナの肖像画は右にスワイプされるという演出で、ヘンリー8世の妃探しが現代のマッチングアプリのように表現されているのが面白かったです。アナ・オブ・クレーヴスの「肖像画と顔が違うから」という離婚の理由が、「ネットで会う約束をした人と実際に会った人の顔が全然違う」という現象が起こる現代と重ね合わせられていることも分かる趣向が施されていて、私的にハマる演出でした。

 6人の王妃たちがそれぞれの人生を歌い上げるスピーディな舞台ですが台詞もあり、なおかつ「誰が一番か」を競っていた彼女たちがパフォーマンスをしていく中で「自分たちはオンリーワン」であることに気づいていく様が丁寧に描かれるなど、きちんと演劇としての良さも持ち合わせた作品でした。
 最後は作品タイトルであり、この6人のバンドの名前でもあるナンバー「SIX」を全員で歌ってフィナーレを迎えます。「ヘンリー8世の妃たち」という共通点を持つ6人がかけがえのない1人の人間として、かつ6人で1つの「SIX」としてラストナンバーを歌い上げるエンディングに加え、カーテンコールでは6人の持ち歌がメドレーでもう一度披露され、最高にハッピーな気持ちで劇場を後にすることができました。

 そんな「SIX」、来日版の後は日本語・日本キャストでの上演も予定されていきます。日本語版も行く予定です。今日聞いた歌詞にどんな訳詞が乗せられるのか、日本のキャストによって作品にどんな命が吹き込まれるのか、今からすごく楽しみです。

 ちょうどこれからキャサリン・パーを主人公にした映画「ファイアーブランド」も公開されるので、こちらも観に行きたいところ。現代ナイズされた歴史モノも良いですが、やはり当時の装束や文化や建築がしっかり見られる作品も好きなので。

 劇場の近くには出雲大社の東京分祠もあったので初詣もしてきました。今年も観る予定の作品や観たい作品が色々とあるので、充実した1年にしたいです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。